Asmik Ace オフィシャルサイト より引用
この記事では、映画『トランスポーター イグニション』について、豊富な情報をもとにご紹介します。
トランスポーター史に残る、美女だらけ映画と話題にもなった作品ですね。
また、ジェイソン・ステイサムによる『トランスポーター3 アンリミテッド』から、7年の時を経て制作された本作品は、純粋な続編ではなく「リブート」作品となりました。
過去作とは区切りをつけ、新たに仕切り直した作品です。
本記事では、テレビ版も含めた新旧の比較も行いつつ、このエド・スクライン版『トランスポーター』の魅力に迫っていきたいと思います!
ジェイソン・ステイサムの続編が出来なかった理由についても、ジェイソン・ステイサム自身の言葉でお伝えします。
さらに、当時の日本版主題歌(エンドロール曲)もご紹介しますので、是非、聴いてみて下さい!
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目次
映画『トランスポーター イグニション』とは
ストーリーを一言でいうと
トランスポーターのフランク・マーティン・ジュニアが、父親のフランク・マーティンシ・シニアとともに、娼婦4人組のマフィアへの復讐劇に巻き込まれて、その成就に手を貸す物語です。
制作関連の情報
2015年 96分 フランス・中国製作
原題:(仏)Le Transporteur: Héritage /(英)The Transporter Refueled
監督:カミーユ・ドゥラマーレ
脚本:アダム・クーパー / ビル・コラージュ / リュック・ベッソン
製作:マーク・ガオ / リュック・ベッソン
格闘・スタントコーディネーター:ローラン・デミアノフ
アクション振付:アラン・フィグラルツ
カーアクションコーディネーター:ミシェル・ジュリエンヌ
ジャンル:カーアクション / アクション
オフィシャルサイト:EuropaCorp オフィシャルサイト
日本配給元オフィシャルサイト:Asmik Ace オフィシャルサイト
・ ・ ・
監督はアクション映画『フルスロットル』で監督デビューをし、今回が2作目となるカミーユ・ドゥラマーレです。『トランスポーター3 アンリミテッド』では、編集にクレジットされていました。
脚本は、これまでの劇場版を手がけてきた、リュック・ベッソン&ロバート・マーク・ケイメンのコンビではなくなっています。映画『トランスポーター』以来のファンにとっては、少し気がかりなところですね。
アクション陣も新しくなり、これまでの『トランスポーター』を作りあげてきた、コリー・ユンやシリル・ラファエリは参加していません。
今回のアクションは、『96時間 レクイエム』などで、コーディネートと振付を担当している、ローラン・デミアノフと、アラン・フィグラルツが作りあげています。
ちなみに、ローラン・デミアノフは『トランスポーター3 アンリミテッド』に、スタントマンで参加していました。
振付のアラン・フィグラルツの方は、主演のエド・スクラインが、アクションのメンターと呼ぶ人物です。現実に特殊部隊にも所属していたという話もあるようなので、スクライン版フランク・マーティンが、どんな格闘シーンを見せてくれるのか、期待したいところです。
これまでの『トランスポーター』ファンにとって嬉しいのは、シリーズを通じてカーアクションの大黒柱ともなっているミシェル・ジュリエンヌが、引き続きカースタントを仕切っていることですね。
今回は、どんなカーアクションで魅せてくれるのか、期待に胸が膨らみます!
トレーラー
トレーラーはこちらです。
Copyright 2017 EuropaCorp. All rights reserved.
動画 EuropaCorpオフィシャルサイト より引用
あらすじ
今回の舞台は、シリーズでおなじみのコート・ダジュールです。
前作までは、マルセイユやニースがメインでした。
今回はニースの他に、モナコ、カンヌ、サント・マキシム、マントンなど、コート・ダジュールにある様々な街が舞台になっています。
では、ストーリーを追ってみましょう。
15年前、サント・マキシムの売春街
1995年。
南フランスのコート・ダジュールの夜。
若きマフィアのカラゾフとレオ、そしてユーリの三人が、サント・マキシムの売春街を襲撃します。
カラゾフが抱える街娼たちのシマとするためでした。
車から降りてくる街娼達。その中には、恐怖で顔をこわばらせた、少女アンナの姿もありました。
カラゾフに「笑え」と強要されるアンナ。
一方、その売春街の娼婦だった少女マイッサは、カラゾフの力に魅力を感じたのか、その元で働くことを望み、カラゾフについていくのでした。
カラゾフが売春街を襲った時のセリフについてですが、字幕版では「ここの商売は俺が仕切る」となっています。
「ここ」と言われると、画面に見える売春街を巡って小競り合いしているようで、小物のマフィアにも思えてくるセリフです。
そんな人物が「ロシアの犯罪王」、あるいは「犯罪皇帝」と呼ばれていきますので、ちょっと違和感があります。
しかし、吹替え版ではオリジナルを意識して「今後、コート・ダジュールの売り商売は俺が仕切る」となっています。
コート・ダジュールといえば、西はマルセイユに近いトゥーロンから、東はイタリアとの国境までも意識した、広い範囲を指しますので、マフィアとしてのカラゾフの力量の具合が、ずいぶんと違ってきます。
15年後のアンナ
ホテルのカフェラウンジ。
街娼になってから15年、アンナは、娼婦の仲間のジーナとキャオ、そしてマリアとともに、カラゾフへの復讐を実行しようとしていました。
ホテルにいるアンナに、「今ならまだ引き返せる」と、ジーナから電話が入ります。しかし、アンナは実行に移すことを選び、ジーナもその決意に従うのでした。
フランク・マーティン登場
さて、ついに、リブート版フランクの登場です。
「ストーリーを一言でいうと」でお読みいただいたように、今回の主人公は、親子ともども「フランク・マーティン」という名前で、二人とも活躍します。
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』の、ハリソン・フォードとショーン・コネリーのようですね。
ここでは呼び方を簡易にするため、エド・スクライン演じる主人公を「ジュニア」、レイ・スティーブンソン演じる父親を「シニア」とさせていただきます。
さて、その登場の場所は、やっぱり地下駐車場でした!
・ ・ ・
シニアの定年祝いのために買い物を済ませたジュニアが、愛車を止めてある地下駐車場に着くと、ギャング達が愛車のアウディS8を狙っているところでした。
スマートフォンで車体を操作しながら、ギャング達をあしらったジュニアでしたが、そのせいで、シニアを迎えに行く時間としては遅れてしまったようです。
・ ・ ・
イギリス領事館で、定年の手続きを済ませたシニアをピックアップするジュニア。
シニアに遅刻を責められますが、シニアの定年を祝福する、父親思いのジュニアでした。
復讐の幕開け
その夜。
ジーナとキャオは、カンヌのカールトンホテルで、カラゾフの会計士をしているトゥルギンを殺し、モナコ銀行の金庫のキーを手に入れます。
そして、薬のやり過ぎで死んだフリーの売春婦の死体に、カラゾフのトレードマーク「クール・ブリゼ」のペンダントをつけ、トゥルギンの死体と一緒に燃やします。
クール・ブリゼに所属する自分達のうち、その一人が死んだと、カラゾフに思い込ませるためでした。
・ ・ ・
一方、シニアと定年祝いをしていたジュニアのもとに、一本の電話が入ります。ジュニアの評判を聞いた、アンナからの電話でした。
ジュニアは、仕事の依頼なら、直接会って話す必要があると告げ、アンナもそれを了承します。
カラゾフや、カラゾフの元で働くホステスのトレードマークとして登場するのが「クール・ブリゼ」です。
その意匠は、ハートマークに短剣が突き刺さったデザインで、失恋マーク(💔)を表現しています。
フランス語で、クールは「ハート」、ブリゼは「壊れた」という意味ですので、英語で言えば「ブロークン・ハート」、つまり「失恋」という意味です。
日本語では「傷ついたハート」と訳されていました。
人生に対する「失意」も現したブロークン・ハートだと考えると、もう悲しみも乾いてしまったようなアンナ達の心を表しているようで、そのペンダントを付けるアンナ達が切なくも見えます。
アンナの依頼
翌日、マジェスティックホテル。
ジュニアはホテルを訪れ、アンナの話を聞きます。
その依頼内容は、3時間後にモナコ銀行でアンナ自身と、二つの荷物をピックアップしてほしいというものでした。
仕事上の3つのルール、「契約厳守」「名前は聞かない」「依頼品は開けない」をアンナに伝えるジュニア。
前金も用意されていたことから、ジュニアはその仕事を引き受けて、ホテルを後にします。
アンナは、トランスポーターの準備ができたことを、ジーナとキャオに電話で伝え、作戦の実行を指示するのでした。
モナコ警察とのカーチェイス
時間通り、モナコ銀行に到着したジュニアでしたが、アンナだけではなく、アンナとまったく同じ格好をしたジーナとキャオも、アウディS8に乗り込みます。
アンナの言う「二つの荷物」は、ジーナとキャオのことでした。
「契約遵守」のルールに従って、契約の即時解除を告げるジュニア。
しかし、シニアが彼女達に誘拐され、監禁されていることを知ります。シニアはマリアに騙されて誘拐されたのでした。
不審に思った警察官の指示を振り切り、アウディS8を発進させるジュニア。モナコを舞台とした、モナコ警察とのカーチェイスの幕開けです!
・ ・ ・
ついに、スクライン版フランクのドライビングがベールを脱いだわけですが、その感想を一言でいうと「淡泊」な感じです。
しかし、ただ淡泊なわけではありません。
F1のレーサーに例えるなら、若手No1ドライバーといってもいい、マックス・フェルスタッペンのような淡泊さです。
「まるでお茶を飲みながらレースしているかのよう」と形容されながらも、現代のF1界きってのスピードを持つ、マックス・フェルスタッペン。
ジュニアの場合は、さすがにそこまで淡々とはしていませんが、若いながら、完全にアウディをコントロールして、ピンチらしい場面もなく、高速カーチェイスを制していきます。
フランスのパトカーのような、チープさを感じさせる「サイレン音の風情」がない点も、より淡泊さを加速させていたように思います。
しかし、迫力がないわけではなく、十分見応えのあるカーチェイスです!
残り12時間、シニアがハマった罠
カーチェイスを制したジュニアは、彼女たちのアジトに到着します。
依頼された仕事が終わり、シニアを連れて帰るつもりのジュニアでしたが、アンナに追加の仕事を要求されます。
当然断るジュニアでしたが、シニアに振る舞われていたビールには、遅効性の猛毒が盛られていました。
12時間以内に解毒しないと、死に至ると告げられるジュニア。
またもやルールに反して、彼女たちからの追加の依頼を受けざるおえない状況に置かれるのでした。
EuropaCorpオフィシャルサイト より引用
— 帰ってくれたら、君はもっと素敵だ —
厄介ごとに巻き込んだアンナに『三銃士』からの引用で言い返すジュニア。
しかし、全編を通じて、アンナの方が一枚上手でした。
彼女たちの狙いは、まず、カラゾフの仲間のレオとユーリの銀行口座から、その資金を奪い取ることでした。
そのために、会計士トゥルギンを襲い、奪った鍵を利用して、モナコ銀行に預けてあるカラゾフの手帳を手に入れたのでした。
ジュニアに計画の説明を求められたアンナは、『三銃士』の言葉を引用して、はぐらかしていました。
また、ホテルのシーンでも、ジーナとキャオが有名なセリフ「One for all, All for one」を交わしていました。ラグビーでよく言われる言葉ですね。
娼婦達と三銃士、一見突拍子もない設定にも見えますが、著者のデュマは黒人奴隷の祖母からも血を受け継いでいる作家で、その人生を豪快に生き抜いた人物でもありました。
そう考えると、奴隷のように扱われたアンナ達が、デュマの作品に心を寄せたとしても、あながち変ではないように思えます。
レオ・イマソフの口座を狙うアンナ達
ジュニア、アンナ、ジーナ、キャオの4人は、レオが経営するフルムーン・クラブを襲います。
その手口は、まず病院から麻酔用のガスを強奪し、それを、レオのクラブにあるスモーク装置に設置することで、全員を眠らせるという大胆なものでした。
EuropaCorpオフィシャルサイト より引用
アウディS8をクリープ現象で走らせながら、モッブ達を倒していくジュニア。
思い返すとその必然性はないのですが、アイディアとしては面白いシーンでした!
その計画はうまくいき、気を失ったレオの指紋情報と、カラゾフの手帳に記載された送金コードを使用して、口座にある全資金を奪うことに成功します。
ユーリの口座を狙うマリアとシニア
一方のマリアは、ギャング達に手伝わせ、ユーリが雇っている機長をホテルに監禁します。
ユーリは飛行機で生活しているため、その飛行機に乗り込むための準備でした。
翌朝、シニアとアンナは、臨時の機長と添乗員になりすまし、ユーリが生活している飛行機に乗り込みます。
マリアは色目を使ってユーリを誘い、睡眠薬で彼を眠らせます。そして、ユーリの指紋情報を使用して、彼の口座からすべての資産を奪うことに成功します。
ところが、異変に気づいた副機長を気絶させたために、操縦者不在のまま、飛行機が滑走路を走り出すことになってしまいます。
貨物室から外に逃れようと試みる二人ですが、飛行機が走り出しているため為すすべがありませんでした。
空港に到着したジュニアは、アウディで滑走路に乗り入れ、どうにか二人を救い出します。
しかし、ユーリの手下からの反撃もあり、マリアが撃たれてしまいます。
EuropaCorpオフィシャルサイト より引用
空港の警備隊から逃れるため、ボーディング・ブリッジに飛び込もうと考えているジュニア。
この後の空港内を走行するシーンは、モーターショーの会場内を走った、テレビ版のパロディかもしれません。
マリアの治療
アジトに戻ったジュニア達は、シニアの指示のもと、マリアの治療を行い、どうにか一命をとりとめます。
また、シニアのビールに盛られたという毒は、実はただの水で、アンナ達のブラフだったことが判明します。
劇中では、医者にかかることの出来ない状況から、あり合わせのもので治療されていました。
砂糖は殺菌に、そして、蜘蛛の巣は止血に使われています。
そんなのあり?と思ってしまいます。
しかし現実に、砂糖は高い濃度が維持される限りにおいてですが、殺菌効果があり、蜘蛛の糸も、古代ギリシャから治療に使用され、創傷を覆う材料としての研究もされているとこのことです!
さすがに映画のようなやり方ではダメだとは思いますが、砂糖での治療が珍しいものではない国もあるようなので驚きです。
ジュニアとアンナの交わり
一仕事終えたジュニアとシニアは、彼女たちから、娼婦としてのもてなしによる「お詫び」を受けます。
復讐を続ければ、カラゾフに殺されるだろうというジュニアに、「死を恐れるほど、命に執着はない」と、ダルタニャンの言葉を引用して答えるアンナでした。
・ ・ ・
本作を観終えた後に振り返ると、自分の言葉で答えないところが、意味深に思えてくるシーンです。
ジュニアにすべての心を開かず、本心にある恐れも押し殺していた、そんなアンナかもしれません。
また、細身ながら、鍛えられた胸板を披露しているエド・スクラインです。イケメン具合も申し分なく、女性ファンには魅力的なシーンだと思います。
・ ・ ・
すべての用事が済んだジュニアとシニアは、彼女たちのアジトを離れ、帰路につきます。
カラゾフの反撃
アンナ達に襲撃されたレオは、クラブの監視カメラが捉えていたアンナ達とジュニアの姿から、カラゾフの関与を疑います。
ジュニアとも因縁のあるカラゾフは、レオから6時間の猶予をもらい、事態の収拾に乗り出します。
・ ・ ・
無事にシニアを送り届けたジュニアでしたが、今度はカラゾフにシニアが誘拐されてしまいます。
カラゾフからの交換条件は、レオの店を襲った女3人の身柄と、モナコ銀行に預けてあった手帳でした。
ジュニアはアンナたちのアジトに戻り、一緒にカラゾフの元に行くことを依頼します。
アンナはそれを受け入れます。一足先に仲間から抜けていたジーナの代わりは、マリアとなりました。
クルーザーでの因縁の再会
浜辺でマイッサに迎えられ、ジュニア達はカラゾフのいるクルーザーに連れて行かれます。
再会したジュニアとカラゾフは、過去のことを思い返します。
特殊部隊の小隊を、自身の犯罪に抱き込もうとしたカラゾフでしたが、ジュニアだけが従わなかったのでした。
そこに、カラゾフが呼んだ覚えのない、レオとユーリもクルーザーに乗り込んできます。
アンナは、カラゾフに指示されて、二人の金を奪ったと説明します。
二人の疑いを解かなければならないカラゾフは、自身の口座残高を二人に見せることになりました。
・ ・ ・
実は、カラゾフによるシニアの誘拐もふくめて、すべて、アンナ達が仕組んだ罠でした。
密かに海中からクルーザーに乗り込んだジーナは、バックドアからシステムをハッキングし、レオとユーリから奪った資産を、すべてカラゾフの口座に移すことに成功します。
自身の口座に、レオとユーリの資金が流れている事を知ったカラゾフは怒り狂い、アンナ達を殺そうとします。
クルーザーの中は銃撃戦となり、キャオとマリア、そして、レオとユーリも銃弾に倒れます。
船尾では、ジーナがさらに、カラゾフの口座から全額を抜き取り、アンナの口座に移すことに成功します。
しかし、ハッキングされていることに気づいたマイッサに、背後から撃たれてしまうジーナでした。
彼女は最後の死力を振り絞り、マイッサを殺しますが、助けに来たシニアの腕の中で息を引き取ります。
崖の上での決闘
カラゾフはアンナを連れてボートで逃げますが、ジュニアも後を追い、崖の上にカラゾフを追い詰めます。
EuropaCorpオフィシャルサイト より引用
カラゾフを追うジュニア。
最後の死闘は一作目がトレーラー、二作目が飛行機、三作目が列車、そして今回はクルーザー!かと思いましたが・・・クルーザーを離れて崖の上に行ってしまいます。
因縁に決着をつけるべく闘うジュニアとカラゾフ。
崖の上でのもみ合いますが、二人を追ってきたアンナによって、カラゾフは射殺されます。
そして、ジュニアもアンナに銃口を向けられます。
最後にはトランスポーターの口も封じるという、そういう計画だったのでした。
しかし、ジュニアを撃つことができないアンナは、すべてを謝り、独りどこかへと消えていきます。
1ヶ月後
どこかのプールサイド。
タブレットを操作する元気なアンナの姿がありました。
ジーナ、キャオ、マリアの親族に、カラゾフ達から奪った金を送金するアンナ。
フランク親子にも、それぞれ1,000万ドルを送金するアンナでした。
登場人物の紹介
では、改めて登場人物をご紹介します。
今回は女優陣が同じ格好で登場したりするので、見分けるのが大変なところがあります。
公式インスタグラムのリンクも付しますので、是非、確認しながらご覧ください。
フランク・ジュニア
俳優エド・スクライン
フルネーム:フランク・マーティン・ジュニア
「契約厳守」「名前は聞かない」「依頼品は開けない」の3ルールをトレードマークとする、元特殊部隊所属のトランスポーターです。
シニアの言葉から推測すると、生まれはイギリスのようです。
・ ・ ・
演じるエド・スクラインもイギリス出身ですが、もともとは画家志望でアートスクールに通っていた人物。
しかし、卒業後はミュージシャンになり、その後に俳優になりました。本人曰く、その時々の自分の心が愛しているものだけをやると決めているそうです。
『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン3では、長髪で麗しい見た目のダーリオ・ナハリスを演じていました。
それを降板して本作に出演したようですので、女性の『ゲーム・オブ・スローンズ』ファンにとっては、ちょっと残念だったかもしれませんね。
最近では、映画『ミッドウェイ』で操縦桿に握り換え、第二次世界大戦の戦闘機、ドーントレスを操っています。
フランク・シニア
俳優レイ・スティーブンソン
フルネーム:フランク・マーティン・シニア
定年したばかりの英国の元スパイ。
スパイだったことを隠すため、ジュニアには、エビアンの営業、ジーナには航空宇宙関係の仕事と説明していました。
元スパイだったことが判明する前に、いきなりジェット機の機長として立派に立ち回ったりするので、面食らってしまうかもしれません。
・ ・ ・
演じるのは北アイルランド生まれの、レイ・スティーブンソン。
彼は三銃士の一人のポルトスを、映画『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』で演じたことがありますので、三銃士の本を手に取るシーンは、懐かしい気持ちだったかもしれません。
それにしても、50歳になってもその力強さは健在で、観ていて安心感がありますね。
娼婦 アンナ
女優ローン・シャバノル
ヒロインで、クール・ブリゼの娼婦。
自分をゴミのように使うカラゾフに復讐を企てて実行します。
貧しい村に生まれ、12歳の時に、母親に500ドルでカラゾフに売られた過去を持っています。
公式インスタグラムの紹介の仕方が面白いです!
殺し屋で、銀行強盗で、誘拐犯で、誘惑する女で、すべての黒幕です。
・ ・ ・
演じるローン・シャバノルは、本作で女優業に区切りをつけたのか、現在は絵本作家のような活動をしているようです。
美貌と演技の両輪で本作を引っ張っていた存在だと思いますので、少し残念ですね。
娼婦 ジーナ
女優ガブリエラ・ライト
バスク地方出身の、クール・ブリゼの娼婦。
カラゾフの会計士トゥルギンを撃ち殺し、復讐計画の最後でも重要な役割を果たしていました。
シニアに「ラブ」と呼ばれるほど親しくなる女性です。
・ ・ ・
演じるガブリエラ・ライトは、アーティストの父親と教師の母親をもつ人物。
役者としてのキャリアもさることながら、人道的な社会活動もしている女性のようです。そんな、人をサポートする人柄が、ジーナにも表れていました。
娼婦 キャオ
女優ウェンシア・ユー
ジーナと供にトゥルギンを襲った、クール・ブリゼの娼婦。
※赤いタンクトップを着た女性です。
ジーナと一緒に、トゥルギン殺しの実行をしていました。
その際、娼婦の死体を一人でホテルに運び込んだかのような流れには、脚本の無理を感じてしまいます。
・ ・ ・
演じるウェンシア・ユーは、世界三大ミスコンの一つ、ミス・ワールドの2012年ウィナーです。
中国の農村出身の彼女は、学費を稼ぐため餃子店のウェイトレスをしたり、ホステスをしたりと、なかなか苦労した人物のようです。
娼婦 マリア
女優タティアナ・パイコヴィッチ
エストニア人で、シニアを誘拐した、クール・ブリゼの娼婦。
他の3人が黒髪なのに対し、彼女だけブロンドのロングヘアーなのが特徴です。
一人でシニアを誘拐したり、ギャングを集めてパイロットを監禁したりと、なかなか頼もしいマリアです。
とはいえ、撃たれた傷もすぐに直ってしまったかのような人物描写には、さすがに無理がありました。
・ ・ ・
演じるタティアナ・パイコヴィッチは、デンマークのコペンハーゲン生まれの女優。
本作を最後に出演作がないのが残念ですが、結婚してお子さんもいるようですので、主婦に専念しているのかもしれません。
犯罪帝王 カラゾフ
俳優ラシャ・ブコヴィッチ
フルネーム:アルカディ・カラゾフ
ロシアの犯罪皇帝と呼ばれ、コート・ダジュールの売春ビジネスを独占するマフィアです。
その昔、ジュニアが所属していた小隊を抱き込むことに成功するも、ジュニアだけが従わず苦労した経験をもっています。
しかし、ジュニアのトランスポーターとしての仕事ぶりについては、常々賞賛していたようで、アンナがジュニアを雇う切っ掛けを作ることにもなりました。
・ ・ ・
演じるラシャ・ブコヴィッチは、セルビアの俳優です。
本作のレビューを読むと、「トランスポーター史上最弱のボス」とも言われてしまっているのが残念です。
映画『ダイ・ハード/ラスト・デイ』では、小指を立てて野菜スティックをもつ姿が素晴らしい、アリクを演じていました。
今回もそんな強烈なキャラを観てみたかったです!
カラゾフの女 マイッサ
女優ノエミ・ルノワール
元サント・マキシムの街娼。
サント・マキシムでカラゾフと出会ったことで、彼に付き従うようになった女性です。
・ ・ ・
演じるノエミ・ルノワールは、「ヴォーグ」などの女性誌の表紙を飾るほか、「グッチ」などの有名ブランドのモデルも務めてきた人物。
その美貌もさることながら、利発な雰囲気のマイッサを好演していたと思います。
少女時代の子役も、そんなマイッサの将来を予感させる雰囲気で、良いキャスティングだと思いました。
カラゾフの仲間 レオ
俳優レン・クドリアヴィツキ
フルネーム:レオ・イマソフ
カラゾフの仲間で、フルムーン・クラブ(FULL MOON Club)を経営するマフィア。
アンナ達に麻酔薬を使って眠らされ、全資金を奪われてしまいます。
立ち場的にはカラゾフと同等ぐらいのマフィアにもかかわらず、あまり見せ場がないのが残念です。
・ ・ ・
演じるレン・クドリアヴィツキはロシア生まれ、ベルリン育ちという人物。
小さい頃からバレエやヴァイオリンを習っていたようで、ヴァイオリン奏者としてもステージに立っているようです。
カラゾフの仲間 ユーリ
俳優ユーリー・コロコルニコフ
カラゾフの仲間で、ジェット機で暮らしているマフィア。
シニアとマリアの偽計にハマり、全財産を奪われてしまいます。
・ ・ ・
演じるユーリー・コロコルニコフは、モスクワ生まれのロシア人俳優。
彼もエド・スクライン同様に『ゲーム・オブ・スローンズ』で役を得た人物でした。
彼のほうはシーズン4のストゥール役なので、エド・スクラインが降板していなければ、シーズン4を供に彩ることになっていたはずです。
ベクタウィ警部
俳優サミール・ゲスミ
警部。
ジーナとキャオが実行したトゥルギン殺しの件で、カラゾフの関与を疑う警部です。
所轄は明確に描かれていませんでした。
警部と聞くと、前作までのタルコニ警部のような活躍を考えてしまいますが、こちらの警部はぱっとしない役回りです。
・ ・ ・
演じるサミール・ゲスミは、フランスの俳優で、IMDbによると130以上の映画やテレビ作品にクレジットされているベテランです。
2020年には初の長編映画監督作『Ibrahim』が、アングレーム映画祭でグランプリに輝き、カンヌ国際映画祭の、公式選出作品にも選ばれたました。
素朴でピュアなヒューマンドラマの雰囲気がする『Ibrahim』、日本語版の登場が楽しみです!
コロナ禍の影響で、2020年のカンヌ国際映画祭は中止されました。
その代わり、コンペティション部門などの区分けも廃止して、公式選出56作品を発表しています。
日本からは、河瀬直美監督の『朝が来る』や、ジブリ初の3Dアニメ作品『アーヤと魔女』などが選出されていますが、その中にサミール・ゲスミ監督作が入っていたんですね。
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ジェイソン・ステイサムが続編の出演を蹴った理由
さて、ここでちょっと寄り道し、リブートになった理由をみてみたいと思います。
実は、ジェイソン・ステイサムには、さらに3作分のオファーが来ていました。
エンタメニュースサイト「VULTURE」とのインタビューで、その辺の事情をジェイソン・ステイサムが語っています。
記事によると、ジェイソン・ステイサムとしても『トランスポーター』シリーズはいい経験になっていて、さらに出演したい気持ちはあったようです。
しかし、脚本が提示されず、3作分のギャラの提示額が、1作分のギャラにも満たない額だったので断ったとのこと。
こちらがそのインタビューの言葉です。
But they wanted me to sign on and do three more films without even seeing a script, and they offered me less money to do three than I’d get paid for one! So it was a business decision.
VULTURE より引用
もともとキャリアの開始が遅かったジェイソン・ステイサムですので、さらに3作となると、かなり渋い年齢のトランスポーターが見られたはずですね。
過去版トランスポーターとの比較あれこれ
さて、リブート版の本作も、カーチェイスあり、アクションありで、過去のトランスポーターに負けじと頑張っています。
ここでは、テレビ版も含めて、どんな違いがあるのか、次の3点を取り上げて、比較してみたいと思います!
① 愛車とカーアクション
② アクションスタイル
③ こだわりの腕時計
① 愛車の変遷とカーアクションを比較!
映画『トランスポーター』
愛車:BMW735i
アウディよりもマフィアな雰囲気を持つBMW735iは、ニース警察のハッチバックのパトカーとの対比が際だって、素晴らしい雰囲気のカーチェイスを作りあげていました。
・ ・ ・
映画『トランスポーター2』
映画『トランスポーター3 アンリミテッド』
テレビ『トランスポーター ザ・シリーズ』
愛車:アウディA8
続編はすべてアウディA8で、映画版ではW12エンジンと4輪駆動の特性を活かして、よりパワフルで、敏捷性に富んだカーアクションを見せてくれました。
テレビ版では一つ世代が進んでD4系になり、特にヘッドライトの印象がずいぶんと変わりました。
・ ・ ・
本作『トランスポーター イグニション』
愛車:アウディS8
本作では、A8をベースにして、その走行性能をさらにハイスペック化した、アウディS8が愛車になっています。
秘められたそのスポーツ性能は、新生フランクの魅力として申し分なく、磨きのかかった「鋭さ」を画面にもたらしていたと思います。
A8で1,000万円ぐらいの高級車ですが、S8になると、1,600万円ぐらいの価格になります。
そんな高級車ですが、ジュニアは証拠を消すといって一台爆破させていました。
・ ・ ・
アウディになってからは、防弾仕様のアウディA8 Lセキュリティをも意識したような、頑強な車体描写が特徴にもなっています。
駐車場のシーンで、ジュニアが「自動運転も近い」と言っていました。
その言葉通り、さらに世代の進んだ2018年型のアウディA8が、市販車として世界初のレベル3(条件付自動運転)を達成しました。
ちなみに日本では、2020年4月に法改正され、レベル3の自動運転が解禁されています。
具体的には「高速道路の同一車線で、60km/h以下の走行」なら、もうマンガに熱中しても、スマホだけ見ていても問題ないことになります。
とはいえ、かなり限定された条件ですので、ジュニアが言うように、まだまだドライバーの仕事はなくならなそうですね。
② アクションを比較!ダンスになっていはイケない?
さて、アクションシーンはどうなったのでしょうか?
ここで、3人のフランクを比較してみたいと思います。
・ ・ ・
ジェイソン・ステイサム
長年の飛び込み選手生活で鍛えたジェイソン・ステイサムだけあって、がっしりした肉体、ぶれない身体、そして、空中も水中も自由自在に動き回れる、そんなフランクでした。
アクションの世界では「ダンスになってはいけない」という言葉があるそうです。
しかし、ジェイソン・ステイサムの場合は、ダンスのように見えるアクションシーンが、逆に魅力にもなっていたと思います。
見せ方の上手さと、気迫、そして、確かな身体能力に裏打ちされた物理的な説得力が、その土台にあったからだと思います。
・ ・ ・
クリス・ヴァンス
テレビ版フランクを演じたのは、クリス・ヴァンスでした。
彼もジェイソン・ステイサムに比べられた俳優ですね。
彼の場合はダンス的な雰囲気がなく、よりケンカ殺法的なアクションだったと思います。
ジェイソン・ステイサムのような、飛び跳ねての空中アクションシーンや、水中でのアクションシーンこそありませんでしたが、アクションの見せ方はうまく、それなりに見応えのあるフランクでした。
また、スタントを使ったアクションも含めると、非常に多彩なアクションが楽しめるテレビ版でした。
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エド・スクライン
本作で初めて『トランスポーター』を観た人は、純粋に楽しめたかもしれません。
クラブでの格闘シーンでは、トランスポーターならではの、アイディアのあるバトルも飛び出し、純粋に面白かったのではないでしょうか。
掃除機から引き出したコードを使ったり、引き出しを出し入れしたりと、それなりに頑張っていました。
しかし、ジェイソン・ステイサム版から観ているファンからは、厳しい評価が聞こえてきます。
まず、劇場版に期待する「豪勢さ」という点では、ジェイソン・ステイサムの、飛んだり潜ったりのアクションに比べると、幅が狭すぎました。
また、スタントを使った多彩さもテレビ版に負けています。
格闘シーンでも、物理的な違和感を感じる場面もあり、それこそ「ダンス」になってしまっている感じも否めません。
ただ、エド・スクライン自身、格闘技の素養はまったくなく、撮影前に3週間の特訓を行っただけだと語っています。
それを考えれば、なかなか頑張っていたのだとは思います。
一つ一つの動作について、「心の裏付け」が必要だということも、しっかり考えて撮影に臨んでいたとのことで、それはそれで素晴らしいと思いました。
そこまでしっかりやっていたならしょうがない!
今後の経験に期待したいところです。
シニアのアクションも少しだけありました。
テレビドラマ『ROME[ローマ]』では、ローマ軍の荒くれ者のプッロを好演してたレイ・スティーブンソン。
ジュニアとは、さすがに年季の入り方が違う調子で、もっとシニアのアクションシーンを観てみたい気持ちになります。
③ フランク達のこだわり、腕時計を比較
さて、『トランスポーター』と言えば、2作目以降、腕時計のどアップシーンが欠かせなくなっています。
しかも、三者三様の腕時計ブランドを身につけているのが面白いところ。
フランク達のこだわりの腕時計を比較してみましょう。
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ジェイソン・ステイサム
「オフィチーネ・パネライ ルミノール・クロノ」
ジェイソン・ステイサム版フランクの腕時計は、ステイサム自身のお気に入りのイタリアのブランド、オフィチーネ・パネライでした。
第二次世界大戦中にイタリア海軍向けに開発されたのが始まりという、「ルミーノル」モデルを身につけています。
このチョイスは、トランスポーター視点というよりは、飛び込み選手視点、あるいは、特殊部隊視点の腕時計といえます。
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クリス・ヴァンス
「タグ・ホイヤー カレラ キャリバー16」
テレビ版フランクの腕時計は、スイスのブランド、タグ・ホイヤーでした。
そして、「カレラ」のルーツはというと、当時「世界でもっとも過酷なレース」と呼ばれたという、メキシコの公道レース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」です。
メキシコを5日間かけて縦断するというレースで、未舗装の道路も含め、平野部、山岳部と起伏に富んだ道を、3,000km以上走りきる必要があります。
ヨーロッパのみならず、中央アジア、アフリカ、アメリカ大陸と、世界を駆け回るかのようなテレビ版フランクでしたので、相応しい腕時計ですね。
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エド・スクライン
「オメガ スピードマスター プロフェッショナル」
リブート版フランクの腕時計は、スイスのオメガでした。
モデルは別名「ムーン・ウォッチ」とも呼ばれる、スピードマスター プロフェッショナルです。
ムーン・ウォッチというのは、NASAで採用され、アポロ計画を通じて、月面に降り立った最初の腕時計だったことによります。
しかし、「スピードマスター」というモデルは、その名前からも感じられるように、レースやスポーツを意識して開発されたもの。
自動車レースの最高峰F1の世界では、特にミハエル・シューマッハが愛するモデルとして有名です。
また、フェラーリの元会長にして、イタリアの「抱かれたい男」ランキングの常連、ルカ・ディ・モンテゼーモロも、スピードマスターをつけた写真がみられます。
こちらも、スピード感のある色男なトランスポーター、エド・スクライン版フランクにぴったりな腕時計かもしれません。
しかも、アポロ計画のごとく、月 (フル・ムーン・クラブ) に降り立ったジュニアでした!
本作の見どころ
では、本作の見どころについてご紹介します。
娼婦達の復讐実行のリアルさと三銃士の言葉
本作はある意味、美女4人組の映画とも言えます。
というのも、本作のドラマ性も彼女たちの境遇からくるものですし、全体の展開の采柄を握っているのも彼女たちだからです。
まずは、そんな彼女たちの境遇について、少し考えてみたいと思います。
本作が公開された2015年当時、フランスの売買春は合法でした。
ベクタウィ警部の話では、警察官もクール・ブリゼのホステスの世話になっていると言っていましたが、別に問題ないわけですね。
40年代には売春宿が違法となっていたため、売春を行う者は、映画のように街娼として客を得るのが普通だったようです。むしろ、それがフランスの名物だったようです。
しかし、それも2003年の3月中頃までで、「国内治安のための法律」が施行されてからは、客引きが禁止されました。
そう考えると、15年後のアンナ達は、より肩身の狭い状況で仕事をしていたはずですね。
そして、15年後のほうが、売春が闇ビジネス化していて、人身売買による性奴隷の問題がクローズアップされていた時代ともいえます。
フランスの性労働者の85%が人身売買の被害者と考えられているという、2016年のニューズウィーク日本版の記事からも、そんな状況がうかがえます。
アンナ達は、そんな現実的な社会を描く存在でもあったわけです。
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映画の導入部で、ジーナが「本当にやるの?今なら引き返せる」とアンナに確認するシーンは、結構リアルです。
復讐というような大それたことは、リアルではないかもしれませんが、実行しなければ、少なくとも生きていられるという彼女たちの状況にリアルさを感じます。
実行するには、死という現実を受け入れなければなりません。そんな出口に向かって走り出す彼女たちの姿が、隠れた見どころだと思います。
トゥルギンを殺した後、ジーナ達が「One for all, All for one(一人は皆のために、皆は一人のために)」の言葉を交わしたことは前述しました。
※日本語訳では、前半の部分しか訳されてませんが、オリジナルでは全部言われています。
しかしこの言葉、『三銃士』の言葉よりも、その舞台となった17世紀当時に実際に語られた言葉のほうが、彼女たちにぴったりに思えてきます。
それは、プラハ窓外放出事件という出来事において、弾圧されたプロテスタントの指導者が読み上げた一文です。
生命、肉体、名誉、繁栄の喪失をいとわず、我らはここに、一人は皆のために、皆は一人のためにとの気概を以て確固と立ち上がったのである。我らは誰にこびへつらうことはない。それどころか我らはすべての困難に対して、できうる限り、相互を助け守るものである
映画公開後の翌年、フランスでは買春(売春のほうではなく、買う方の買春です)が非合法化され、逆に2003年の法律が無効となったそうです。
つまり、今度は買う方が取り締まられ、売る方の取り締まりは和らいだわけですね。
そんな事情もあり、むしろ、売春婦の方が、非合法化に反対のデモをするなど、一筋縄ではいかない問題に発展しているようです。
参考 売春婦ではなく客を処罰する買春禁止法がフランスで可決ニューズウィーク日本版15年前のアンナとサント・マキシムの秘密
さて、アンナ達の現在の状況を確認したところで、アンナの15年前を描いた、映画の冒頭のシーンを、もう一度振り返ってみたいと思います。
映画のファーストカットはどこかの港町の夜景でした。
「コート・ダジュール 1995年」と字幕がつくだけですが、この港町はトゥーロンとカンヌの間にある、サント・マキシムの街です。
母親に500ドルで売られ、アンナがたどり着いた街です。
その街の名前は、7世紀に実在した、キリスト教の聖者、聖マクシモスに因んでつけられたもの。
そしてこの聖マクシモスは、皇帝によって監禁された末に、話せないように舌を抜かれ、さらに、書くことが出来ないように右手を切断されたという人物です。
そんな過酷な人生を送りながらも、最後まで皇帝に屈することなく信念を貫いた聖者でした。
アンナがたどり着いた街が、そんな聖者の名を持つ街だったというのは、語る者のいない、秘密の見どころです。
ここ、どんだけ火事多いねん!あの消火栓サークルを特定!
ちょっと娼婦達の境遇話が続いたので、アクション映画らしからぬ、重い文章になってしまったかもしれませんね。
では、本作のカーアクションの最大の見どころをご紹介致します!
それは、モナコ警察とのカーチェイスの大トリで、ジュニアが魅せた超絶ドライビングです。
トンネルを抜けて、追いすがってくる白バイ隊をどうにかしなければならいジュニアは、4方に消火栓が並んだ「ラウンドアバウト」を使って、噴水のスクリーンを作り出します。
トレーラーをご覧になった方はもう見たかもしれませんが、消火栓がぐるっとならぶ光景に、「こんなところある!?」と、つい目をパチクリさせてしまうシーンでもあります。
ラウンドアバウトは、日本ではあまり見かけませんが、信号不要の交差点ですね。実際のロケーションをストリートビューで確認してみてください。
実際には消火栓はありませんでしたね!
この何でもなさそうな場所で、あんなシーンを考えついてしまう製作陣には、拍手を送りたい気持ちになります。
ちなみにこの場所、カーチェイスをはじめたモナコではなく、20分くらい離れているマントンの街でした!
96分の映画なのに2時間ドラマ!崖上の闘い
映画版『トランスポーター』としては初めて、最後の死闘の場が「乗り物」の中ではありませんでした。
あらすじでもご紹介したとおり、今回の決着は崖の上です。
このシーン「2時間ドラマみたいでしょぼい」という、日本ならではのレビューも目に飛び込んできます。
実は、私もそう思いました。
クッションらしきマットの形状も見え、そっちにも気が取られてしまいます。
しかしです、現実に崖の上で闘う山羊達の姿をみてからは、考えを改めることにしました。
崖の上で闘うというのは、それだけですごいことなんだと・・・
本作をさらに楽しむためのトリビア
さて、知っておくと、より深く楽しめるトリビアをご紹介します。
三銃士とは?
フランスの作家、アレクサンドル・デュマの『三銃士』については、ここまでも何回か触れました。
『三銃士』は独立した作品ではなく、『ダルタニャン物語』の第1部にあたる部分を指します。
舞台はルイ13世時代のフランス。実在した軍人、ダルタニャン伯爵をモデルにしたフィクション小説です。
田舎から銃士になる希望を抱いて出てきたダルタニャンと、銃士のアトス、ポルトス、アラミスがひょんな形で意気投合するという話ですね。
読み出すと止まらない、そんな面白さがある作品です。
ここで、劇中のセリフ(吹替え版)が参照している箇所を、名訳との誉れも高い、鈴木力衞の訳でご紹介したいと思います。
[1]一人はみんなのために(ジーナ)
四人は常に一体となって協力する——これを我々の標語にしようではないか
講談社文庫『ダルタニャン物語1 友を選ばば三銃士』より引用
(ダルタニャンの言葉)
直訳しがちな言葉ですが、この訳はちょっと趣が違いますね。
[2]たくさん賭けるほど儲けは大きい(アンナ)
じっと待っているうちに適当な機会が訪れるさ。ときがすべてを解決してくれる。賭けが大きければ大きいほど、待てばチャンスが訪れるものだよ
講談社文庫『ダルタニャン物語2 妖婦ミレディーの秘密』より引用
(アトスの言葉)
アンナとしては「だから、私達の言うことを黙ってきいてなさい」という意味だったようですね。
[3]たいそういいかただが、帰ってくれたらなおいいのに(ジュニア)
あなたはほんとにいいかただけど、帰ってくださればなおすてき!
講談社文庫『ダルタニャン物語2 妖婦ミレディーの秘密』より引用
(妖婦ミレディの内心の言葉)
ジュニアがアンナに言い返した言葉は、実は女性キャラの言葉だったところが面白いです。
[4]死を恐れるほど命に執着は感じない(アンナ)
猊下、はっきり申し上げますが、わたくしは猊下の御前で自分の命を守ろうなどとは、一刻たりとも考えたことはございません。どのようなご処罰も喜んでお受けする覚悟でございます。死を恐れるほど生命に執着は持っておりませんので
講談社文庫『ダルタニャン物語2 妖婦ミレディーの秘密』より引用
(ダルタニャンの言葉)
ダルタニャン、作者はフランス版ドン・キホーテだと言っていますが、なかなかかっこいいんです。
あのクラブの猫って何?
レオ・イマソフが経営するFULL MOON Clubのシーンでは、DJが猫キャラのかぶり物をしていました。
あの猫は『不思議の国のアリス』でおなじみの「チェシャ猫」ですね。
突然のデフォルメキャラ要素に、これトランスポーターだよね?とつい首をかしげてしまうシーンです。
フランス版セカオワのDJ LOVE?とか考えちゃいますが、DJを演じているのはおそらく役者。
というのも、このシーンの曲はイギリスのDJ、ジェイコブ・プラントの「Louder」ですが、彼が猫のかぶり物をしているという情報はなさそうだからです。
チェシャ猫というと、自由自在に体を現したり消したりできる猫ですので、同じ格好でカラゾフ達を翻弄する、アンナ達を暗示したものかもしれません。
是非、ここでFULL MOON Clubの雰囲気に浸ってみましょう!
Louder
℗ Dim Mak Inc.
参考資料
映画公開当時、プロモーションのために来日したエド・スクラインが、EXILEのSHOKICHIと対談しています。この記事を書くにあたっても、その内容を大いに参考にしました。
その対談の内容はこちらです。
参考 EXILE SHOKICHI × エド・スクレイン、クールな男たちが語る愛するものへのストイックな思いとは。VOGUE「音楽」という二人の共通点をもとにして、SHOKICHIが手がけた日本版主題歌「IGNITION」にも触れられていました。
エド・スクラインも大絶賛の日本版エンドロール曲です。ファンなら是非、聴いておきたいところです!
IGNITION
関連作品
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(3)『トランスポーター3 アンリミテッド』
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関連記事 テレビ版『トランスポーター ザ・シリーズ』の全体像と観る順番(ネタバレ)
シリーズのコンプリートには避けて通れないテレビ版の魅力について、各話の特徴なども踏まえてお伝えします。
(5)『トランスポーター ザ・シリーズ ニューミッション』
TVドラマ、シーズン2、フランク役はクリス・ヴァンス
(6)『The Hireシリーズ』
BMWのプロモーションムービー、主演はクライヴ・オーウェン
※リュック・ベッソンがインスピレーションを得た作品
まとめ
ここまで読んで下さいまして、ありがとうございます!
では、『トランスポーター イグニション』について、ざっとおさらいしていきましょう。
制作関連
● 過去の『トランスポーター』とは区別をつけて制作されたリブート作品
● 前作まで脚本に関わってきたロバート・マーク・ケイメンが脚本に参加してない
● カーアクションの監修は一作目からずっと同じミシェル・ジュリエンヌ
ストーリー
● フランク親子が、娼婦4人組のマフィアへの復讐劇に巻き込まれて、その成就に手を貸す物語
● フランスではアンナのように人身売買で買われてくる性奴隷が現実に存在する
● カラゾフが奪ったシマはコート・ダジュールという大きな地域で、一つの街ではない
キャスト
● フランク役は『ゲーム・オブ・スローンズ』を降板して撮影に挑んだエド・スクライン
● 美女4人組を見分けるのが最初は大変
● マイッサ役のノエミ・ルノワールは、黒人モデルとして非常に成功した人物
● 端役のベクタウィ警部を演じたサミール・ゲスミは、監督としても花開いた人物
本編の見どころ
● 『トランスポーター』ならではのアイディアバトルは、リブート版でも健在
● テレビ版も含めて、過去の『トランスポーター』との違いを楽しむと面白い
● アンナがたどり着いたサント・マキシムは、信念を貫いた聖マクシモスに因む街
● 消火栓が並んだラウンドアバウトでのカーアクションは必見!
トリビア
● ジェイソン・ステイサムが続編のオファーを蹴ったのはビジネス上の決定だった
● 三銃士の有名な台詞「One for all, all for one」は、昔からあった言葉。
● DJが被っていた猫キャラは、『不思議の国のアリス』に登場するチェシャ猫
● 砂糖は殺菌に、クモの糸は止血に効果あり
● ジュニアの腕時計は、レーススピリットを起源にもつ、オメガのスピードマスター
…
他にも沢山ご紹介しましたが、とりあえずこんなところです!
エド・スクラインも頑張っていた作品でした。
しかし、地上・空中・水中を選ばないアクションで、『トランスポーター』を人気作に押し上げたジェイソン・ステイサムのすごさを、改めて感じさせる作品でもありました。
そんな縦横無尽なアクションに挑戦するエド・スクラインを、次回作で観てみたいですね!
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