映画『ミスミソウ』怖い、けど美しい。究極に胸糞悪い鬱映画・・・原作との比較も!

少年少女が織り成す最悪の鬱展開と血みどろグロ描写、気分が悪くなること間違いなしの最低で最高な鬱映画があるなら、もちろん観たいですよね?

『ミスミソウ』は鬱展開とグロ描写、そして映像美が魅力的な映画です。漫画原作のこの作品、私自身原作ファンなのですが、これの実写映画化が報じられた時、原作ファンはかなりざわつきました。

え?あのシーン実写化するの・・・?
あの展開、映画にしちゃって大丈夫なの・・・?

スタートから既に鬱、その後も鬱、鬱、鬱展開の嵐です。しかも、ちょっと流血描写とかいうレベルではなく、結構しっかりグロいです。原作ファンですら目を背けたくなるシーンもしばしば。

鬱展開とグロ描写、しかも登場人物が中学生の少年少女。観ていて心苦しくなります。こんなに胸糞悪いならせめて大人であれ・・・と思わずにいられませんが、子どもだからこそ表現出来る鬱もある!

今回はそんな映画『ミスミソウ』のあらすじと結末、魅力の数々を紹介していきます。そして漫画版とどう違うのか?原作ファンなら気になるところですよね。

映画も漫画も鑑賞し、映画のパンフレットも購入した『ミスミソウ』大好きな私が、漫画版との違いを徹底解説します!

以下、重要なネタバレを含みますのでご注意ください。

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あらすじ

出典:映画.com

春花の学校生活

都会から田舎の中学校に転校してきた野咲春花。転校から半年ほど経ち、あと少しで卒業・・・そんな時期、春花は陰惨ないじめを受けていました。しかし春花は妹と両親のことが大切で、家族の存在に助けられていじめにも屈さずにいます。

ある日、ついに父親が学校へ行きました。ところが、春花の担任は見て見ぬふり。父親は春花に「もうあの学校には行かなくていい」と言います。それから春花がしばらく学校を休んでいると、クラスメイトの流美がお見舞いに来ました。

「学校に来てよ。でないと私、困るんだよね・・・!」

流美はいじめっ子グループから、春花を登校させるように命令されて来たのでした。しかし春花は学校へはもう行かないことを告げます。そして翌日からいじめの標的になった流美は、春花の家に火をつけてやると宣言するのでした。

最悪の悲劇。そして復讐がはじまる・・・

そんなことは知らず、ある日春花がクラスメイトの相場晄と出掛けていると、その間に家に火を放たれてしまいます。絶望し泣き叫ぶ春花。相場は、燃え盛る春花の家に飛び込んでいきました。そして家から出てきた相場の腕の中には、丸焦げになった妹が・・・。まだ息があり、妹は救急隊員に連れていかれます。

その後おじいちゃんと同居を始め、学校も暫く休んでいました。しかしある日、春花は学校へ登校します。どよめく教室。家族を焼き殺したことがバレてると思ったいじめっ子グループの女子3人は、春花を呼び出すと自殺しろと命令しました。

しかし春花は、地面に埋まっていた釘を握りしめ、女子生徒の眼に突き立てます。女子3人が突然のことに慌てふためいているうちに、殴り、刺し、3人は抵抗するすべも無く春花に殺されるのでした。雪が降り積もり、3人の死体は雪に隠されます。

それから春花の復讐劇が始まり、次は男子の中のリーダー格だった生徒を殺します。そして、行方不明者が相次いでいることを不審がった男子生徒2人がいました。ボウガンが趣味の生徒と、エアガンの改造が趣味の生徒。自分達が殺される前に先に殺してやると、2人で春花を襲撃しますが、返り討ちにあい2人とも春花に殺されてしまいました。

ある日春花が相場と出掛けていると、いままで感情に蓋をしていた箍が外れ、春花は声を上げて泣きます。「俺が守るから。」と相場は春花を抱きしめ、キスしました。

相場の裏の顔

その頃、女子生徒3人の死体を見つけてしまった流美はクラスのボスである妙子に電話をします。しかし妙子はそれを信じず、流美のことを罵倒しました。

春花と妙子が会い、2人は話します。実は春花が転校してきたとき、最初に声をかけてくれたのは妙子。春花と妙子は元々仲良しでした。別れ際、「胸を張って生きて」と春花に言われ、妙子は泣きながら縋り付き「私を許して」と言ったのでした。

妙子が1人で帰っていると、流美が突然襲いかかってきます。妙子は反撃しますが、右胸にナイフを突き立てられ倒れてしまいました。

ある日春花のもとに相場から電話がかかってきます。おじいちゃんは春花と妹を連れて東京へ戻るつもりで、以前相場にそのことを話していました。「俺も行くから東京で2人で住もう。おばあちゃんも説得したから」と言い出すのでした。

春花がそれを断ると、相場は「俺が守るって約束したじゃないか」と逆上し、電話を切ってしまいます。相場宅の居間には顔が腫れ上がった相場のおばあちゃんが・・・「説得した」というのも、ただ殴りつけて言うことを聞かせただけでした。相場は殴ることが愛情だと思っている異常者だったのです。

少年少女たちの悲しい結末

流美は春花の妹の病室にきていました。春花の妹も殺してしまおうと思ったのです。その時春花がやってきて、揉み合いになっていると妹の容態が急変し、流美は逃げていきました。そんな時、おじいちゃんも救急搬送されてきました。誰かに殴られたようで、血まみれになっています。病院を飛び出し山道で相場をみつけ、相場の手を見るとその手は明らかに誰かを殴った後の手でした。

「これは2人のためにやったことだ」と自分の行動を正当化しようとする相場。そうこうしているうちに流美が現れ、春花の家族を焼き殺した時の状況を嬉々として説明してきます。取り乱した春花が流美に襲いかかると、流美はナイフを春花の腹に突き立てました。それをみた相場は流美を殴り、殺します。

そのとき相葉が投げ出したカバンから写真が散らばり、春花はそのうちの1枚をみて固まりました。燃え盛る炎の中、黒焦げになりながら妹を守るように覆い被さる父。小さくうずくまる父と妹の姿を写した写真でした。

それをみた春花は激怒して相場を殺そうとします。それに対して逆上した相場は春花を何度も殴り、瀕死状態になった春花を写真に収めようとカメラをのぞきます。しかしこの場所はボウガン好きの生徒を殺した場所でした。手元にボウガンが転がっていることに気付いた春花は、相場の頭を撃ち抜いたのでした

春花はその場を立ち去りますが、少し歩いたところで倒れ込んでしまい、動かなくなった春花の上に雪が降り積もっていきます。

卒業式。春花に関わった人間で生きていたのは、妙子だけでした。誰もいない教室で妙子は、春花と楽しく過ごしていた日々に思いを馳せるのでした。

登場人物

出典:映画.com

野咲春花

流美の逆恨みによって家族を焼き殺されてしまいます。儚くひ弱そうな少女で、無表情に、しかし瞳の奥には復讐心を滾らせている雰囲気は、なんとも言えない美しさがありました。

相場晄

春花のことを支えてくれる人物かと思いきや、思い通りにいかないと殴りまくる異常者です。春花のことが好きだったのも、不幸な境遇の中で健気に生きている春花とそれを支える自分という構図に心酔していただけでしょう。

小黒妙子

クラスのボス。流美をはじめ、クラスメイト達が妙子の顔色を伺い金魚の糞のようにくっついてくるのを鬱陶しく思っていました。皆は妙子が相場のことを好きだったから春花に横取りされて怒っているのだと思っていましたが、実際は妙子は相場の異常性に気付いていて、そんな男と仲良くしてる春花が許せなかったからでした。

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感想考察

出典:映画.com

春花と妙子の関係は?残酷で無垢な青春を描く

最高に胸糞悪くて気分が悪くなる映画ですが、そんな気分をリフレッシュしてくれるシーンがあるんですよね。それが、春花と妙子が仲良しだった頃のシーン。

夏の教室、爽やかに風が吹き込む窓辺、溶けかけのアイスキャンディー。2人はカーテンの中に隠れて笑いあっています。なんとも切なくて、愛おしい描写です。そしてその中に、相場と話す春花を妙子がじっと見つめているシーンがありますね。

アレ?妙子って春花に恋愛感情抱いてる?

また、妙子は流美には暴力をふるうのに春花には暴力をふるいません。そのことを流美が妙子に詰め寄ったとき「たえちゃん、まさか・・・」と何かを言いかけます。まさかに続く言葉はなんだったのか?恐らく「まさか春花のことが好きなのか」とか、そういった具合かとは思います。

しかし、作品内で相場に惹かれる春花が許せなかったと明言していますよね。流美が勘違いしていた可能性はありますが、実際妙子が抱いていたのは恋愛感情というより思春期特有の独占欲かなと思いました。

たしかに、「コイツ絶対ヤバい奴だよな〜」って嫌悪してた人と自分の友達が仲良くしてたらちょっと嫌・・・。大人だったらちゃんと伝えて解決したりしますが、思春期故に感情が先行して、仲良くするのやめようとなってしまったんでしょうね。

そんな小さな出来事からいじめに繋がってしまったのも、妙子がクラスのボスだったからです。妙子はスクールカーストの頂点でした。

そして都会から引っ越してきた春花は、スクールカーストに属さない孤高の存在。クラスのボスと孤高の存在がはじめは仲良くしていたけど、いつの間にか2人が話すところを見なくなった・・・。そんな状況をみたクラスメイト達の思考回路は、きっとこんな感じでしょう。

妙子は春花と仲違いした→妙子は春花が嫌いになったんだ→妙子の味方をしなきゃ→妙子に気に入られるために春花をいじめよう!

そうして始まったいじめ、妙子はとめることもしません。しかしそれは妙子が春花を嫌いだったというより、拗らせた独占欲が憎しみに変わってしまったのだと思います。流美には暴力をふるう妙子の態度の差をみると、流美は嫌いで春花はそうじゃないとわかります。しかし独占欲を拗らせてしまっていたから春花へのいじめを止めようとも思わなかったのでしょう。

流美が春花の家に火をつけるという狂行に及んだのもまた、妙子に気に入られるためでした。みんな、クラスのボスである妙子のために必死だったのです。

そして妙子は、クラスのボスというみんなが求める人物像にならざるを得ませんでした。東京に憧れ金髪に染め、気の強い性格だった妙子は田舎の小さな中学校の中では、まさにスクールカーストの頂点、クラスのボスという地位がピッタリ。

しかし妙子にとっては、クラスメイト達が金魚の糞のようにくっついてくるのも、勝手に暴走して春花へのいじめをエスカレートさせるのも、鬱陶しくてたまりません。放火だって、当たり前ですが本当にやると思わないですよね。自分が軽率に「がんばって」なんて言ってしまったことを、妙子は激しく後悔します。

このように、いじめ問題だけでなく、思春期特有の独占欲やスクールカースト等、多感な時期だからこそ起こる様々な問題を浮き彫りにし、その問題の積み重なりで起こる惨劇を描いています。

青春物語といったら部活に励んだりスクールラブのような爽やかな物語を思い浮かべますが、これもある意味、青春物語。これ以上に嫌な青春はありませんけどね・・・。

怖いのに観てしまう・・・その魅力とは?

積み重なる鬱展開とグロシーン、恐ろしい映像なのに観てしまうのは何故でしょうか?

この映画の監督を務めたのは、内藤瑛亮。『ライチ☆光クラブ』や『先生を流産させる会』最近の作品だと『許された子どもたち』など、少年少女の暗い物語を数多く手掛けています。ミスミソウもまさに内藤瑛亮の得意分野というわけです。

この映画のグロシーンをついついみてしまうその理由は、赤と白のコントラスト。一面の銀世界に真っ赤な鮮血が飛び散るその様子は、恐ろしいだけでなく美しさを感じます。目を背けたくなるようなグロ描写ですが、特殊メイク自体は特別リアルで生々しいというわけではなく、どちらかといえば作り物っぽさを残し、白に映えるような赤になっていました。

また、なんといっても山田杏奈演じる主人公の野咲春花。雪が降りしきる中、憂いのある表情で佇むその姿は、息を飲むほど美しいのです。

この映画自体はぶっちゃけB級作品。役者が若いので、やはりモブキャラ役のセリフの棒読み感はありますし、カメラワークなどが惜しいシーンもあるので、全てを絶賛できる訳では無いというのが正直なところ。

しかし、ハッとする美しさで記憶に残るシーンがあるのは間違いありません。

原作とはどう違う?漫画『ミスミソウ』との比較

私は漫画『ミスミソウ 完全版』を上下巻読んだので、それを踏まえてどこが違ったかを解説していきます。原作のネタバレも含みますので、原作を読んでいない方はご注意ください。

まず、全体のストーリーやキャラクターなどは原作に忠実でした。特に流美役、大塚れなの迫真の演技は素晴らしいです!クラスから浮いている流美、そして狂った様子が忠実に再現されています。

原作と違う点といえば、妙子でしょう。映画の妙子は、春花のいじめに対して我関せずといった様子、クラスメイト達がいじめているのを眺めているだけで、暴力はおろか暴言を吐くことすらしません。しかし漫画の妙子は、暴力はふるいませんが春花に対して暴言や嫌がらせをしていて、いじめっ子グループの中心人物であることが明らかです。

それから、映画では妙子と春花がかなり親密な様子で描かれていましたが、漫画ではもう少し二人の間に距離がある印象を受けます。

また、大きく異なるのがラストシーン。映画では妙子だけが生き残りますが、漫画では妙子も死んでいて春花のおじいちゃんだけが生き残っています。ここの部分の変更について、原作者の押切蓮介は「たしかに妙子は死ななくても良かったかも」と語りました。

映画では、春花へのいじめを加速させたのは妙子ではなくクラスメイトであること、春花と妙子はかつて仲が良かったことを強調する演出をして、妙子が死なないラストにしたということですね。

まとめ

出典:映画.com

究極の鬱を体感したい!という普通の鬱展開に飽きてしまった方にオススメです。鬱展開もグロシーンも盛り沢山!原作ファンでも原作未読でも、この手の話が好きな方であれば楽しめると思います。

少年少女が繰り広げる胸糞悪い展開。殺される直前にママやパパのことを考えたり、必死になって「タイムタイム!タイムって言ってんだろ!」なんて言いながら逃げたり、垣間見える子どもらしさに胸が苦しくなります。

いじめから発展していく惨劇、一面の銀世界と鮮血のコントラスト、春花の儚く美しい佇まいと、復讐に燃える表情・・・。観終わった時には、心を抉られたような虚無感に陥るこの作品、一見の価値アリです。

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