映画『羊と鋼の森』は本当におもしろい?あらすじと感想。

「焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです」 (by板鳥総一郎)

(引用:『羊と鋼の森』)

ピアノの調律師。それは決して目立たない仕事であるけども、ピアノを弾く人にとっては命とも言える存在です。

「羊と鋼の森」は、そんな調律師のプロを目指す、青年の成長を描いた映画です。ピアノの曲と映像がとても美しく、主人公のまっすぐひたむきな姿と彼を取り巻く人たちとの関係に、じんわりと涙が込み上げてくる、心あたたまる映画です。

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出典:映画.com

一見地味とも言える調律師という仕事をテーマにしているせいか、映画がつまらないと思っている人もいるようです。ピアノ歴30年以上の私がおすすめするこの映画の魅力を、あらすじや感想とともにご紹介します。

※本記事はネタバレを含みます。


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作品情報

映画「羊と鋼の森」公式予告

制作年:2018年

監督:橋本光二郎

原作:原作は「本屋大賞2016」の大賞を受賞した作家・宮下奈都(みやした なつ)さんの同名の作品。他にも、紀伊國屋書店による「キノベス!2016」第1位に選ばれたり、第154回直木三十五賞の候補作に選ばれるなど、数々の功績を残しています。

これほど評価されるだけあって小説はやっぱり素晴らしく、一気に読みきってしまいました。記事の後半で、小説と映画の違いについて触れていますので、ぜひ読み進めてみてください。

 

タイトルの意味

何とも不思議なタイトルですが、羊とは、ピアノの弦を叩くハンマーに付いている羊毛(フェルト)で、鋼とは弦のことを指しています。

鍵盤を叩くと、ピアノ内部のハンマーヘッドが連動して弦を打つことで音が鳴るので、そこで奏でられる音を「森」という言葉を使って表現しているのです。

また、原作の作者である宮下さんは、ユーキャンが運営するサイト「マナトピ」でのインタビューで森について、「人生という森に入り込んでいく、という意味も含んでいる」と言っています。(参考サイト:https://manatopi.u-can.co.jp/break/160412_843.html(マナトピ))

森だけに深い意味があり、作品の神秘的で奥深い雰囲気が題名からも漂ってきますね。

あらすじ

※ここからはあらすじを紹介します。ネタバレを含みますので、ご注意ください。

①運命の出会い

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出典:映画.com

何とか高校を卒業して何とか暮らしていければいい。

山で育った田舎の高校生、外村直樹はそう考えていました。そんなある日、学校のピアノを調律に来ていた調律師、板鳥総一郎に出会ったことで、調律師の道を目指すことになります。彼の音には森の匂いがしたのです。

②姉妹との出会い

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出典:映画.com

東京の調律学校を卒業して晴れて調律師となった直樹は、地元の楽器店に就職します。その楽器店は、憧れの調律師である板鳥の勤め先です。

ある日、先輩の柳伸二の紹介で、佐倉家の姉妹に出会います。調律の常連で、姉の名前が和音(かずね)、妹が由仁(ゆに)です。2人ともピアノを弾きますが、その音色は全く逆。姉の和音は優しく柔らかい印象で、妹の由仁は活発で元気な印象です。

2人とも、後に開かれるコンクールに向けて練習に励んでいます。

③失敗と挫折を乗り越えて

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出典:映画.com

順調なスタートを切った直樹ですが、調律師として様々な失敗や挫折を味わいます。紆余曲折を経て、ついに一人でまかされるようになり、調律師としてのやりがいも感じてくるようになりました。

そして、いつしか、和音(かずね)のためにピアノを調律したいと思うようになります。

④調律師としての意味

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しかしコンクールのあった夜、姉妹のどちらかがピアノを弾けなくなったという知らせを受けます。後に分かる事ですが、弾けなくなったのは妹の由仁の方です。

直樹は、調律師としてどうにか助けになりたいと、姉妹の家に向かおうとしますが、柳に止められます。「ピアノはピアニストをどうこうする力はない。」直樹は柳にそう告げられ、何のために調律師になったのかと、絶望します。

更に、勤務当初から感じのよくなかった、先輩の秋野匡史からも、「調律師が勘違いしちゃいけない」と言われてしまいます。

調律師としての自信も目標も失いかけ、直樹は森にさまよってしまいます。

⑤祖母の死

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出典:映画.com

そんな中、祖母が亡くなってしまいます。いつも温かく直樹のことを見守ってくれていたおばあちゃんです。

弟から、「おばあちゃんは兄貴のことが自慢だった」と打ち明けられます。「小さい頃から森に迷っても必ず戻ってきていたからきっと大丈夫。」おばあちゃんは直樹のことをそんな風に言っていました。

おばあちゃんは森の入り口に椅子をおいて、いつもそこに座っていました。それは、森に入っていった直樹が帰ってくるのを待っていたからです。

森に一人佇む直樹。自分が調律師を目指した時の気持ちを思い出します。

「ピアノは世界とつながっている」

直樹が調律師を目指したのは、その世界を見たかったからでした。一度原点に戻ったことで、直樹の気持ちはリセットされたようです。

⑥自分の殻からの脱出

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出典:映画.com

妹の由仁は、ピアノを弾くときだけ手が動かなくなるという病気で弾けなくなりましたが、姉の和音もショックでピアノを弾けなくなってしまっていました。

しかし、柳が結婚することになって式のピアノ演奏を頼まれたことで、今まで閉じこもっていた殻から抜け出し、前進することに決めます。

そして、和音はピアニストになる決心をします。

「ピアノを食べていきていく」

ピアノで食べていくのではなく、ピアノを食べて生きていく。和音なりのピアノに対する想いが伝わってきます。

そして和音に感化されたかのように、由仁も調律師になって和音のピアノを支える、という決意をします。

⑦直樹の決意

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出典:映画.com

一方の直樹は、柳の結婚式のピアノの調律を任され、先輩たちにも誉められたことで、コンサートチューナーを目指す決意をします。

「大丈夫。山で暮らして、森に育ててもらったんですから。」

板鳥にそう言ってもらえ、直樹はもう森に迷まず、まっすぐにこの森をどこまでも突き進むことに決めました。


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1人1人が個性的な登場人物

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出典:映画.com

本作品の登場人物を紹介します。文特に、楽器店のメンバーは個性的な人ばかりで、すごく秀でた才能があるかと思うと、変な弱点があったりします。完璧に見える人間にも必ず弱い部分があるのだと、とても共感を持てます。

外村直樹(山﨑賢人)

まっすぐで純粋で、何でもメモを取って学ぼうとする姿勢がすごいです。努力家で熱いけれど、自分でも気づかずに、ロマンチックなことを言うことがあります。山育ちのため、花や草木の名前を良く知っています。

佐倉和音(上白石萌音)

由仁の姉で高校生。落ち着いたおとなしい雰囲気があります。妹は練習しなくても発表会などでうまく弾けるけれど、自分は練習しないと不安でつい練習してしまうことから、妹に対して引け目を感じています。姉妹を演じる2人は本当の姉妹です。

佐倉由仁(上白石萌歌)

和音の妹です。性格は姉と違って元気で活発なイメージ。ピアノの練習を欠かさない姉のことをひそかに尊敬しています。

柳伸二(鈴木亮平)

直樹と同じ職場の先輩。メトロノームを聞くと落ち着くという特異な性格の持ち主です。繊細で敏感すぎて、黄緑色の公衆電話の色が許せなかった過去もあります。堅実そうな見た目ですが、実はロックバンドのドラマーもしているという裏の顔もあります。

板鳥宗一郎(三浦友和)

他の調律師からも一目置かれるほどのベテラン調律師で、直樹の職場の先輩でもあります。海外から来日するピアニストには指名を受けることも多いですが、自分が海外で活躍しようとは思っていません。映画では触れられていませんが、飛行機が苦手で海外に行けないという意外な弱点があるためです。

秋野匡史(光石研)

同じく直樹の職場の先輩で、元ピアニストです。耳が非常に良いことから、一流のピアニストの音と自分の音との差が埋まらず、ピアニストの道を諦めて調律師になりました。冷たい印象で、直樹に対して皮肉や嫌味が多いですが、最後は直樹と少し打ち解けはじめます。

 

わかりにくかった点を解説

妹の明るい音のリクエストは誰のため?

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出典:映画.com

姉妹の家に直樹が初めて調律に行った時、それぞれ姉妹から異なった音のリクエストを受ける場面があります。

姉の和音が満足した音にしたあと、妹の由仁からは、「もっと明るい音を」とリクエストされてしまうのです。

そして直樹は、2人の希望が異なる場合にはどうしたらいいのか悩みます。由仁のピアノはもう充分に明るいのに、どうして彼女は更に明るい曲を望むのだろうか。

それは実は、姉の和音のためだったのです。映画ではあまり深く説明されていませんが、和音のために、由仁はもっと明るい音をリクエストしたのです。

姉のために明るい音を選んだ妹の愛が伝わってきます。

 

見どころと感想

①ピアノの選曲

作曲・編曲を久石、演奏を辻井が担当

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この映画のエンディングテーマ曲は、久石譲二が作曲し、ピアノを辻井伸行が弾いています。ジブリの曲を彷彿させる、どことなく切ない曲調と、辻井伸行の優しいピアノの響きが最高です。

また、姉妹を演じる上白石萌音と萌歌がピアノを弾くシーンは、本人によるものと言われています。2人ともピアノを習っていたそうですが、中学生頃に辞めたそう。この役のために、再び練習を行ったそうです。

特に最後に結婚式場で和音が弾いたショパンのピアノソナタ第3番の第4楽章は、複雑な指の動きとテンポの速い曲で、難易度の高い曲です。

私もショパンの曲でベスト3に入るほど大好きな曲ですが、弾くのは技術が足らずに無理でした。それをも弾きこなしてしまう上白石萌音は、シンプルに、すごい。相当練習したのではないかと察します。

また、選曲も良かったです。小説では姉妹がピアノを弾くシーンで、曲名を書いていないことが多かったのですが、映画ではそのシーンのイメージ合った選曲がされていました。

例えば、最初の調律後に和音がピアノを試し弾きするシーンで弾いたのは、ラヴェルというフランスの作曲家による「水の戯れ」。水が森に流れるような美しい旋律が、彼女の清らかな心を表しているようです。

一方妹の由仁が弾いたのは、ショパンの「蝶々」というエチュード(練習曲)です。蝶々が澄み渡る青空にヒラヒラと元気よく舞うようなイメージの曲で、由仁の元気で明るいイメージにぴったり。どちらも自然をテーマにした曲、というのも良いですね。

また、生意気そうで上から目線のジャズピアニストのピアノを調律に行くシーンがありますが、その時に彼が演奏したのは、ラヴェルの「亡き女王のためのパヴァーヌ」。

ラヴェルは超完璧主義者と言われていて、彼が作曲した楽譜には事細かに弾き方の指示や記号が記入されています。このことからラヴェルは、演奏者が自分の曲を思い思いに弾くことを許さなかったと言われています。

しかし映画では、そのジャズピアニストがジャジーなアレンジを加えて弾いていました。彼は自分のアレンジに陶酔しているようです。監督にそこまでの意図があったかはわかりませんが、ジャズピアニストの無知を際立たせるようで、何とも皮肉なシーンだなと思いました。

②数々の名言

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出典:映画.com

映画では、数々の名言が語られています。その中でも私のお気に入りを紹介します。

「明るく静かに澄んで懐かしい文体

少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体

夢の様に美しいが現実のようにたしかな文体」(原民喜)

(引用:「羊と鋼の森」)

板鳥が直樹に言った言葉です。板鳥は調律をする時、こういった音を目指しているというのです。本当に深い、深すぎます。

原民喜は、1905年生まれの小説家で詩人です。彼の言葉を引用して調律の目指すところとしたのは、粋と思いました。

言葉のプロになろうとしている人だけでなく、すべての「一流」と呼ばれるもところを目指す人に当てはまる言葉だと思います。本当に心からしびれますね。

 

「奇跡の耳が、奇跡の指があれば。」(by 直樹)

(引用:「羊と鋼の森」)

何かを目指す人なら必ず一度は、こういうことを思ったことがあるのではないでしょうか。私にもあります。生まれながらの才能があれば、と。でも、結局、才能ではなくて、何事も努力なんです。

「生まれながらの才能がない」「運が悪い」などを言い訳にしていないか。そう自問しながらやるべきことを真っ直ぐにやれたら素晴らしいことだと思います。

 

「才能っていうのはさ、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないか。(中略)諦めない気持ちを持ち続けることが才能なんじゃないか。」(by柳)

(引用:「羊と鋼の森」)

才能とは何か。ものすごく好きなもの、諦められない気持ちがある、というのも1つの才能だというのです。凡人の私には励みになる言葉です。

 

③小説とストーリーは異なる?

出典:文藝春愁BOOKS

小説と映画のストーリーはそう大きく異なりませんが、映画の尺という制限上、省いたり変えたりしている部分が多々あります。

例えば、小説では直樹が弟子にしてくださいと板鳥に頼んだり、どうして直樹が採用されたのかが明かされたり(板鳥が推してくれたから)、といった内容は映画には含まれていません。

また、秋野は昔、板鳥にピアノを調律してもらっていたという意外な過去の関係も、小説では明かされていますが映画にはありません。

秋野に関して言えば、小説ではもっと嫌味で、いちいち気に障ることを言います。けれど、直樹はとても大人です。私だったらすぐに言い返してしまいそうな嫌味にも、直樹は冷静に対応するんです。

直樹が、「どこに行ったって感じのよくない人はいる。」と言っていたのが印象的です。まだ若いのに人生悟ってますよね。

そして、小説の直樹は、熱い。

どんな小さなことでもひたすらメモを取るし、おとなしい性格なんだけども内に秘めた炎が熱く燃え盛っているような、そんな印象です。

また、小説の方は、師弟と弟子、という関係がより濃厚に描かれていて、一流になりたくてひたむきに努力する直樹の心情描写が見事です。

映画でも直樹のまっすぐ努力する様子が描かれていますが、やはり映像やピアノの美しさの方が印象が強くなってしまい、心情描写が足りないな、と感じてしまいます。

小説が映画になった作品全般に言えるのですが、当然ながら細かな心理描写やより深い意味を理解するという点では、映画は原作の小説に劣ります。

これは仕方のないことなのですが、それでもこの映画は、描写や登場人物の心情を、森という神秘的で幻想的な映像を用いながら、うまく表現できていたと思います。

小説の方は名言も多く出てきておもしろいので、映画を見たら、今度はぜひ小説も読んでみてください。

まとめ

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出典:映画.com

ピアノの美しさはもちろん、向上心を持ち続けひたむきに努力する直樹の姿は、何かのプロを目指している人には見習うべき姿です。

心をリセットして、またがんばろうと思える映画なので、ぜひ観てみてください。そして、より深く直樹の森を知るために、小説もあわせて読んでみることをおすすめします。


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