http://bitters.co.jp/choco/より引用
2014年4月に公開された映画「チョコレートドーナツ」は、1970年代アメリカの実話をもとに作成された作品です。ゲイカップルが母親に見捨てたられたダウン症を患っている少年と一緒に暮らすために偏見という大きな壁と闘う作品です。
当事者であるゲイの私が断言します。とても素晴らしい作品です。人間味に溢れ、愛するもののために闘う姿は本当に美しくて素晴らしい。
扱う題材はマイノリティーに対する世間の偏見。
重い題材なので観ていて辛くなりいたたまれない気持ちになりますが、深い愛情や絆がすごく温かく美しい。ぜひとも見ていただきたい作品です。
“以下はネタバレ記事です。嫌な方は見ないようにしてください。“
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目次
チョコレートドーナツのあらすじ(ネタバレ)
1.3人の出会い
1978年カリフォルニア。ゲイバーでショーを披露する3人組のゲイ。その中の1人ルディは歌手を目指していた。ショーの最中、たまたまゲイバーに訪れていたポールと目が合う。
ショーが終わり、控え室にポールが訪れる。ルディとポールは車で体の関係を持ち、お互いのセクシャルティーについて話をしていた。
そこへ巡回をしていた警察官が現れる。2人を見て状況を察知した警察官は、軽蔑しながら2人を注意をする。ルディはただ話をしていただけだとすこしふざけて返す。
ルディの態度が気に食わない警察官は2人に銃向ける。ポールは無防備な市民を脅すのは法律違反だと警察官に訴えた。ここで彼が検事局で働いてることが明らかになる。
自身のセクシャルティを隠したいと思っているポールは、警察官にお互いの為に無かった事にしようと提案しその場をなんとか収めた。
警察官が去った後、殺されるかと思ったと2人は笑い合う。ここで初めて自己紹介をし、お互いの名前を知ることになるのであった。
ルディはポールに自宅のアパートまで送ってもらう。ポールは電話してくれと番号を渡す。ルディは番号を受け取り帰宅する。
部屋へ向かう廊下の途中、人形が落ちているのを見つける。隣の部屋をノックすると女性が現れた。落し物の人形を渡し、子供がいるならその爆音の音楽はやめた方がいいと助言する。
ルディは隣の部屋の爆音の音楽にずっと悩まされていたのだ。助言に対し、女性はルディに向かって差別的な言葉を使い追い返す。
自分の部屋に戻ったルディ。隣の部屋に尋ねてきた男と隣の部屋の女性が夜中に子供を置いて出ていくところを目撃する。
翌朝、ルディの部屋にアパートの管理人が家賃の支払いを求めて訪ねて来る。稼ぎが少なく支払えないルディは多少のお金を払う。管理人はそれに対して不満を露わにする。
不満を言われたルディは隣の部屋の爆音問題を解決しろと意見するが管理人は聞く耳も持たず去っていく。苛立つルディは隣の部屋に怒鳴り込み爆音の音楽を止めた。
爆音の音楽に、散らかった部屋。ベットの隅に子供1人が座り込んでいるのを発見する。ルディはその子供を自分の部屋へ連れて行く。子供に名前を聞くと、その子はマルコだと名乗った。
2.徐々に育まれる愛情
夜に男と出ていく母親、爆音の音楽に散らかった部屋。育児放棄だと確信したルディは、ポールに相談しようとポールの職場に電話をかける。
受付の女性にポールに話があるから電話を変わってくれと言うものの、受付の女性は伝言を伝えますの一点張り。挙げ句の果てには電話を切られてしまう。
ルディは電話に出ようとしないポールに腹を立て、マルコを連れポールの職場へ怒鳴り込む。ポールはこの事態に慌てて、ルディを部屋へ通した。
マルコの事情を話すルディだか、職場に怒鳴り込みんだルディに怒ったポールは担当外だと言い放った。そして職場の人にはルディのことを、いとこだと説明した。
呆れたルディはマルコを連れて自宅へ戻る。自宅に戻るとそこには家庭局の女性がいた。マルコの母親が麻薬所持で逮捕されたとマルコを保護しに来ていたのだ。
いつものように、ゲイバーでパフォーマンスをしているルディは客席にポールがいるのを見つける。ポールは職場で怒ってしまったことを謝るためにルディの元へ来ていた。
ポールの誠意を感じたルディは、閉店したバーでお互いの生い立ちを語り合う。君のことを知りたいと言うポールに、ルディは音楽に乗せて流暢に自己紹介するのであった。
バーの帰り、ポールの車で自宅へ向かう2人。ルディの歌を聞き歌手活動を勧めるポールだが、時間とお金がないとルディは答えた。
話をしてる最中、ルディは真夜中に人形を抱え1人夜道歩くマルコを発見する。マルコは施設を抜け出し、母親を求めて彷徨っていたのだ。マルコを保護した2人はルディの自宅で一夜を過ごす。
翌朝、目覚めたポールは職場へ、ルディはお腹を空かせたマルコに朝食を用意することに。何が食べたいかと問うと「ドーナツ」と答えるマルコ。
朝食にドーナツでは体に悪いからダメだと言うものの、自宅に食べ物がなくチーズとクラッカーを朝食にする。ルディはマルコが笑うところを見て嬉しく思うのだった。
そこへアパートの管理人が家賃の徴収のため部屋を訪ねて来る。家庭局へ保護されたはずのマルコが居るのを見られてしまう。
ルディはポールは電話し、管理人に見られたことを相談する。ポールはそれはまずいとその事も踏まえ、自宅で話があるとルディをディナーに誘った。
3人で食卓を囲み食事をしていても、マルコはご飯を食べようとしない。ポールはマルコに好物を問うとマルコは「ドーナツ」と答えた。
ポールは自宅にあったドーナツをマルコに差し出す。ルディは体に悪いからと止めようとするものの、たまにはいいだろうとポールはマルコにドーナツを与えた。
夕食後、マルコを寝かしつけるルディ。マルコは「ママは戻ってくる?」とルディに問う。「いいえ」と答えるルディ。今度は「一緒にいていい?」と問う。「わからない」とルディは正直に答える。
お話を聞かせてほしいとせがむマルコ。ルディは本を探すが見つからないので自作で物語を聞かせようとする。マルコは「ハッピーエンドがいい」とリクエストした。
マルコが寝た後、彼を引き取りたいとルディとポールは話し合う。「何も悪くないマルコが苦しまなきゃいけないのはおかしい」とルディは言う。
その話を聞いた、ポールは1つだけ手があると2人はマルコを引き取り、一緒に生活するために行動しようと心に決めた。
3.幸せな生活の始まりと終わり
2人は服役中のマルコの母親に会いに行く。服役期間中無償でマルコを育てると約束する。そして、裁判でその権利を獲得する。
裁判所へ向かう途中、ポールはマルコのためにも一緒に暮らそうと不器用な言い訳を並べ、ルディに同居しようと誘う。ルディは喜んで同居に賛成した。
2人はマルコためにいい環境作りをした。教育機関を探し、マルコを医者に診せ、宿題を手伝い、部屋を与えた。
マルコは自分の部屋を与えられ、幸せで涙する。それを見たルディはマルコの肩を抱き寄せ、ポールは優しげな表情で2人を見つめていた。そこからマルコ中心の生活が始まった。
ポールはルディに歌ってほしいとデモテープを作る機会をプレゼントした。ルディはポールとマルコを連れ、デモ音源を録画しにスタジオへ行く。デモテープを1つずつマルコと思いを込めて封をし応募した。
ある日、ポールの上司がバスケットをしながら重要な仕事をポールに任せたいと言ってきた。ポールは快諾した。
さらに上司はパーティを開くのでいとこを連れて参加して欲しいと言う。戸惑うポールだが上司の押しに負け、ルディとマルコの3人で参加することになる。
3人で上司のパーティに参加した。しかし、ポールとルディの関係性を怪しんでる上司。そしてついに2人の関係性がバレてしまった。
上司はポールがゲイであるという不当な理由でポールを解雇する。マルコの監護権を失いマルコは再び家庭局へ奪われ、ルディは拘束されてしまう。
10年間勤めた仕事をゲイであるために失ったポールとそれでもマルコを取り戻したいルディ。2人の意見が激しくぶつかる。
ルディはポールに今が自分を変えるチャンスだとカミングアウトすることを提案して、2人はカミングアウトし、再び監護権を取り戻すために法廷へ。
法廷でマルコの監護権を戻してもらう事を提案するも、関係を偽ったことで相手にされない。そこで、ポールは次の手として監護権ではなく永久監護権を要求したのであった。
4.闘いの始まり
ポールの提案で証言で不利になるからとルディはゲイバーの仕事を辞めることに。今まで一緒に働いていた仲間に嫌味を言われながらもマルコのために決断する。
そして再び裁判へ。マルコを通わせていた学校の先生、家庭局、ルディの元職場仲間とそれぞれ証言させられる。
すべて、ルディとポールがマルコに対する子育てに肯定的な発言ばかりであった。しかし、敵の弁護士は巧みに淡々と質問を続ける。
マルコの前で女装をしたのか、性行為がなかったか、キスはしなかったか、などの質問を続けます。そして、ハロウィンで行った仮装が女装とみなされてしまう。
ルディもポールも感情的になってしまう。そして、ポールは「これはマルコの審理です。」とゲイやストレートであるという本質からズレた質疑応答に抗議します。
そして、彼を大切に育てられるのは私たちしかいないと発言する。裁判官はその発言を考慮すると言いこの法廷は終わりを迎える。
法廷が終わり、ルディはマルコに「迎えにいくから」と電話を入れる。マルコもまた彼らが迎えにくるのをずっと待っていた。
裁判官はマルコを1番に生活しているものの、同性愛を隠さない生き方が将来子供に混乱と影響を与えると決断し、2人は裁判で負けてしまう。
2人は黒人の弁護士を付け、再度裁判で戦う。黒人の弁護士は同じ差別を受ける側の人間を選んだことに皮肉を言いつつ、弁護人を請け負う。
弁護士の仕事ぶりを見て勝利が見えた2人はマルコに会いにいく。そこには、以前より痩せたマルコがいた。そしてそこでもマルコはルディにハッピーエンドのお話を聞かせてとせがむのであった。
5.マルコの死因と終わり、そしてその後
検察局は、マルコの母親を仮出所させ監護権の回復を法廷で申し立させた。母親に監護権の回復を申し立てられては勝ち目が無く、負けてしまう。
さらに接近禁止令も上乗せされ絶望に陥った。裏でポールの元上司が動いていたのであった。
マルコの母親は、相変わらずドラッグに溺れ男性を自宅に連れ込む。その間マルコを廊下に立たせ続けた。
マルコは大事な人形を抱きながら、家を出てルディとポールと過ごした家を探すため夜を徘徊し続けたのちに、橋の下で遺体で見つかった。
ポールは、裁判官や元上司なと関わった全ての人にマルコが徘徊して亡くなったことを手紙にして送りつける。
それぞれがその手紙に目を通す。そしてルディはマルコを想い歌を作り歌を歌う。そしてポールもまたルディが歌うのを見つめている。
ルディが感情を込めた歌を歌いながらこの物語は終わる。
まとめと感想
裁判のシーンは2人の愛情がゲイである事、作品中でいうところの普通ではない人という理由で認められないのは本当に悔しくてたまりませんでした。
そしてポールの上司。とことんイライラさせられます。最後に法廷に現れた時は憎くてたまりませんでした。
ただ、辛いシーンがずっと続くわけではありません。
ルディとポールの愛情や絆が徐々に育まれていくところは見ててホッとしました。同居を誘うときのやりとり。そして、2人の相性がとてもいい所も個人的には良かったです。
作品が、全体的にマイノリティや偏見、差別という大きなテーマだったので重たく感じる人もいたかもしれません。
私はルディが差別的な言葉を言われた時の感情の表し方や、ポールの職場にルディが怒鳴り込んで来たときの、ルディの格好や振舞いのせいで自分がゲイだとバレるんじゃないかと思い怒ってしまうところも、すごくリアルに表現されているなと感じました。
自分がゲイである事がバレて、仕事やプライベートに影響するのを恐れる気持ちは本当によくわかります。私もそうでした。ポールの元上司みたいな人って現実の世界にいるんですよね。
いわゆるお堅い職業に就かれてる方などは特にそういう思いをしながら働いてる方が、たくさんいらっしゃると思うんです。
多様性が進み、LGBTQも認知されつつありますが、地方の方に行くとやっぱり偏見や差別はまだ実際にあります。
普通とか普通ではないとかではなくて、自分が自分として生きることを脅かされないような世の中になって欲しいと思います。
チョコレートドーナツの終わり方と考察。
作品中、マルコの死因は橋の下で独り死んだ。とだけしか表現されませんでした。直接的な死因などは明かされずに終わります。
マルコが患っていた障がいはダウン症です。3日も歩き続け衰弱してしまい、何らかの病気が併発してしまったのではないかという考察がベターな気がします。
誰かに殺害されたわけでも無さそうですし、自ら命を経つのもあまり考えにくいと思います。彼はルディとポールの家を探してた訳ですしね。
また、ルディを演じるのはアラン・カミングという俳優さんです。実は彼も同性愛者です。作品中の演技が全て自然だったのも納得です。
彼もまた色んな偏見や差別と闘ってきたんだと私は勝手に思ってます。
主な登場人物の紹介
ルディ・ドナテロ
正直者で常に愛と正義で溢れ、とてもユニークな人でした。人の中身をちゃんと見れる人なんだろうなと常に思っていました。そして、すごく情に熱い一面もある。
マルコに対して特別な扱いをしないところや、「ママに会える?」という問いに「いいえ」とはっきり答えることができる。ただ、情に熱いがゆえに裁判で取り乱したりする場面も。
この作品の中では1番好きなキャラクターでした!
ポール・フラガー
彼は不器用だけど誠意を感じると言うか、常に紳士的でした。そしてすごく優しい。ルディやマルコを見守る眼差しもすごく柔らかくてパパって感じです。
ゲイであることに悩み、認めるのに時間が掛かったけど愛する人の為になら行動できる男らしいところも好感を持てました。
マルコ・ディレオン
見る人や視点よっては不幸な子なのかもしれません。でも、彼にとってルディやポールと出会えたことは本当に財産だと思います。
そして何より良いのは、とても素直でかわいい子であること。2人と同居するときに幸せで泣いたシーンはとても感動的でした。
ランバート(上司)
本当に頭が硬くて嫌な奴っていう印象しか抱けませんでした(笑)終始、傲慢で恩着せがましい嫌な上司って感じでした。個人的には1番嫌いかな。
チョコレートドーナツの「元ネタ」について
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冒頭で実話を元に作られた作品であることはお伝えしました。ここで少し詳しく掘り下げていきます。
1970年代のニューヨーク、ブルックリンで育児放棄された障がい児をゲイが育てた。という実話に着想を得て作られた作品です。
ここで大事なのは、育児放棄された障がい児をゲイが育てたという事実に着想を得た。というとこです。着想を得て作られた作品なのでチョコレートドーナツのストーリー全てが現実にあった訳では無いということです。
モデルとなったゲイの男性を紹介された監督さんが、その子供を養子にしたらどのような問題に直面するのかを想像して作られた作品です。
そのことも踏まえたうえで、見て頂けるとより楽しんで頂けると思います。
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