【ネタバレあり】「魂の重さとは?」平成のSF名作・『し者の帝国』鮮やかに描かれる物語の最後とは

引用元:IMDb.com

若くしてこの世を去った話題のSF作家・伊藤計劃(いとうけいかく)

2014年から『し者の帝国(正しくは屍者の帝国)』『ハーモニー』『虐殺器官』の3作が、順次アニメ映画化されました。

近未来が舞台となる他2作と異なり、『屍者の帝国』は19世紀末というSFには珍しい過去に時代設定がされた作品です。

今回は、作品に描かれる「魂」に込められたメッセージを紐解きながら、物語全体を考察していきたいと思います!

 


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注意

★以下、映画本作のネタバレを含みます。ご注意ください★

屍者と生者が生存する奇妙な世界

屍者とは

屍者とは、体に特殊機器を埋め込むことで、生者のように再び動けるようになった遺体のことを指します。

(本文では作品のとおり、手を施されていない状態の遺体を死者、機器が埋め込まれた状態の遺体を屍者と区別して表記します。)

肌は土気色で、目も焦点が合っていなく、機械が埋め込まれた部分は雑に縫い合わされていて、まるでゾンビそのものです。

屍者の行動は、体に埋め込んだ霊素書込機に外部から制御指示を書き込むことで操作できます。

一般に屍者は自己の意思を持っておらず、体内の機器に書き込まれた指示以外の自発的行動は起こしません。

屍者製造技術と19世紀末の世界

作中世界で初めて屍者が誕生したのは18世紀。

ヴィクター・フランケンシュタイン博士によるザ・ワンの製造に始まります(別見出しにて詳細記載)。

遺体改造という行為や屍者のおぞましい外見から屍者製造技術は、人々に激しく弾圧されました。

ところが、19世紀に入ると世間の屍者製造への考えが一変します。

度重なる大規模な戦争の勃発急進する産業化に世界は人手不足に陥ります。それを補うべく、屍者は軍事・産業さまざまな場面で生者の生活を支えるようになります。

(レストランのウエイター、御者、軍人、体内に爆薬を仕込み兵器となることも…)

人間のように食事や休養といった生活習慣を持たないことからも、便利な死体人形として屍者は全世界に出回るようになりました。

各国では国全体で屍者を制御するネットワークを所持するようになり、屍者の動作は国家によって管理されるようになりました。

本作の舞台は、屍者が生者の生活に溶け込んでいることが当たり前になった19世紀末。

生者と同じような衣服を身に纏った屍者が街の至る所にいるけれど、生者は表情一つ変えない異質感溢れる奇妙な社会です。

各国は世界大戦の渦に飲まれていく過程という、史実を背景に繰り広げられるサイエンス・フィクション。

そこから生まれる絶妙なリアリティーが本作の魅力の一つです!

あらすじ

 

引用元:『屍者の帝国』web限定ファイナルPV

『人間は死亡すると体重が21gほど軽くなる。それが霊素、いわゆる魂の重さと言われている。』

遺体に疑似霊素という装置を入れることにより死者を蘇らせる屍者製造技術が、世界中で当たり前に行われるようになった19世紀末。

ロンドンの医学生 ジョン・H・ワトソンは、親友と志した「魂の在処(ありか)」の証明をするべく、親友・フライデーを屍者として蘇らせました。

無許可の屍者製造、国家機密である霊素解析…。研究のために違法行為を犯すジョンの元に、ある日、政府諜報組織のトップであるMが現れます。

Mはワトソンの研究を黙認する代わりにある任務を依頼します。

その任務とは、100年前に初めて屍者技術を成功させたヴィクター・フランケンシュタイン博士の手記の捜索

ヴィクター博士が最初に蘇らせた屍者 ザ・ワンは自己の意志を持ち、生者同然に行動したと言われています。

屍者技術の軍事介入・経済介入が当たり前になった世の中で、そのような高度技術の詳細が記された手記は、各国政府垂涎の一品。

ワトソンとフライデーは大英帝国を離れ、「ヴィクターの手記」を探す旅に出ます。

ワトソン一行が最初に目指したのは、ロシアの屍者製造技術者・カラマーゾフのアジト。彼は武装した屍者を率いて反乱を起こしたため、ロシアと英国から指名手配されていました。

秘境の奥地でカラマーゾフが着手していたのは、手記に基づく意思を持った屍者 ザ・ワンの再現。

カラマーゾフは、意思を持つ屍者の実現に執着するワトソンに問いかけます。

「手記の記述の先にある現実を背負う覚悟はあるか?」

魂の証明にすべてを賭けるというワトソンの答えに、カラマーゾフは手記に記された屍者製造法を実践してみせます。

それは、昏睡状態の生者の体に疑似霊素を埋め込むという犯してはならない最大の禁忌でした。

欲のままに技術向上を望む政府、その危険を恐れ手記の破棄を望む者たち、亡き親友の完全な蘇生を望む自身の欲望…。

誰もが夢見る「蘇り」に渦巻くさまざまな思いの中、ワトソンの行きついた旅の答えとは…?

 


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登場人物

 

引用元:IMDb.com

ジョン・H・ワトソン(CV.細谷佳正)

ロンドン大学の医学生。

親友・フライデーと志した「魂の在処」の証明をすべく、法に背き、フライデーを屍者として蘇らせました。

優れた屍者製造技術を国家政府に見込まれ、「ヴィクターの手記」を探す旅に出ます。

フライデー(CV.村瀬歩)

ワトソンの親友で、共に「魂の在処」の証明を研究していた医学生。病に侵され夢半ばで亡くなってしまいます。

屍者として蘇った死後も、記録係としてワトソンと共に行動します。

フレデリック・バーナビー(CV.楠大典)

ワトソンの監視役兼案内役として政府諜報組織・ウォルシンガム機関から派遣された大英帝国陸軍大尉。

優れた身体能力で用心棒としても活躍します。性格は豪快、デリカシーに欠けているところが玉にキズ。

アレクセイ・カラマーゾフ(CV.三木眞一郎)

ロシア帝国の従軍司祭にして天才的屍者技術者。

武装した屍者を率いて反乱を起こし、アフガニスタンの奥地で「新王国」を築いているとされ、ロシアと英国から危険視されています。

「ヴィクターの手記」をもとにザ・ワンの再現に挑むも、失敗を繰り返します。

ハダリー・リリス(CV.花澤香菜

華奢な体でありながら、戦場では自由自在に重火器を振り回す力も持つ白いドレスと金髪が印象的な謎の美女。

元アメリカ大統領のユーリシス・グラントの秘書として「ヴィクターの手記」を追います。

ワトソンの「魂の在処の証明」の研究に強い関心を示しています。

M(CV.大塚明夫)

大英帝国政府の諜報組織・ウォルシンガム機関のトップ。

違法であるワトソンの屍者研究を黙認する代わりに、「ヴィクターの手記」奪還を命じます。

思い描く理想の世界のために、独自の動きを見せます。

ザ・ワン(CV.菅生隆之

100年前にヴィクター・フランケンシュタインが蘇らせた世界初の屍者。

自らの意思を持ち、生者のように言葉を話し、愛を求め殺意すら持ちえたとされています。

人間の身勝手さの上に生まれ・見捨てられた絶望の果てに、復讐を企てます。

 

作品考察

 

引用元:IMDb.com

言葉から解き明かす魂の姿

SF作品でありながら、「言葉」という文学的要素に重きとおく伊藤計劃。

アニメ映画化された3作品ではそれぞれ違った視点から、「言葉」が人間に及ぼす力を科学的に分析しています。

『屍者の帝国』では、SFでもよく取り上げられる魂の神秘を「言葉」で解き明かしています。

「思考は言葉に先行する。言葉があるなら心があり、そこには魂がある。」

魂とは意思であり、その存在は言葉や感情から証明できると唱えた生前のフライデーの仮説こそ、作中の魂の姿そのものです。

世間一般に出回る木偶の屍者と最も生者に近い唯一の屍者 ザ・ワンの違いが、意思を持つこと言葉を操ること心で感情を動かせることであることからも、その考えは裏付けられます。

作中興味深いのは、意思を持つ者と意思を持たない屍者の間に見られる意思疎通の違いです。

作中ワトソンがフライデーの残した言葉の続き(「魂の在処」の証明)を求めるように、生者は声に意思を乗せる手段を「言葉」と捉えがちです。ところがこの作品では、書き記すことで意思を共有する手段にも「言葉」を介することの意味をしっかりと持たせています。

それが屍者の行動を制御するシステムです。

屍者の動きを制御するには、体内に埋め込んだ霊素書込機に外部から接続した危機で指示を書き込むことですが、そこで重要な動作は「パンチカードに制御内容となる言葉を書き込むこと」。

言葉が意思の証明であるのなら、パンチカードに打ち込まれる言葉も屍者たちの意思と考えることが出来ます。

そこに着目したザ・ワンの「全人類の屍者化による世界の統一化」は恐ろしい計画ですが、その中には生死の概念をなくしても生き続ける「言葉」の効力の強さを感じます。

作品における魂の神秘

『屍者の帝国』は時代背景を過去に設定しながらも、現代社会や近未来の科学技術の問題を良くとらえていると思います。

人間に代替する屍者の製造技術向上に加熱する社会はロボット化に邁進する現代社会そのものですし、意思を持つ屍者は人工知能・AIを指しているように見えます。

つまり、この作品は過去に舞台を置きながら、「技術の高度化で生きた人間の動き・外見の再現が可能になった現代科学の次なるゴールは意思・魂の再現」という現代社会を描き表しているのです。

そんな作中で亡き親友の体に再び魂が宿る事を夢見ながら研究に没頭するワトソンの姿は、科学の進歩を夢見る現代人そのものです。

また、人が死に別れた人との再会を望んでしまうのは、文明が進んでも変わることのない人間の自然な心理。

「もう一度君に会いたかった。君の言葉の続きを聞かせてほしかった。」

ワトソンの亡きフライデーへの思いを細かく描き表し、見ている人々の共感を強く惹き付けた上で、作者は重要なメッセージを投げかけます。

それこそが「ヴィクターの手記」にみる意思を持つ屍者製造の危険性魂のあるべき姿です。

意思を持つ屍者の危険性は、ザ・ワンによる全人類統一計画の経過を見るに明らかですが、製造そのものを危険視している点では成功に執着するあまり、倫理観や大事なもの犯してしまう人間の欲深さへの警告の意が込められてると言えます。

ザ・ワンの思い描いた未来に生者が存在していなかったことからも、魂はいくら技術が高度化しても侵すことのできない神聖なものだということが感じ取れます。

ワトソンの旅の終わりに込められたメッセージ

魂の真実に辿り着いたワトソンは、手記に記された禁術を使い、自らの体内に旅の全容を書き込み封印します。

そんな描写から始まるエピローグ部分にも、作者からのさまざまなメッセージを感じることが出来ます。

ワトソンがこの方法をとったことからは、亡き親友の魂に対する自らの欲望を断った覚悟のようなものが窺えます。

生身の体に鋭利な機材を差し込む痛々しい描写と裏腹に描かれるワトソンの朦朧とした表情は、辛い葛藤の末にようやくフライデーの死と向き合うことが出来たそんな心情を表しているようにも思えました。

また、生者らしさの象徴である魂の深層を科学技術に侵されないよう隠ぺいするという暗喩的要素も感じ取ることが出来ます。

ここでワトソンの「魂の在処」を求める長い旅は幕を閉じますが、物語のエンディングとしては始まりの一部に過ぎません。

「ワトソン博士。僕のペンはそう記す。」

ロールエンドを跨ぎ、この言葉と共にエピローグは続きます。そこからは続くのは、旅の記録者に過ぎなかった屍者・フライデーが初めて自身の言葉で語るワトソンへの思い

その語り口・旅の記憶を示す内容から、生前の魂とは異なりますが確かに屍者・フライデーの中に意思は生じていたということが明らかになります。

言葉こそ魂の存在の証明というワトソンの研究が終わるまでに、フライデーの体に生じていた意思はワトソンに伝えられることはありませんでした。

私はここに、「魂の再現は科学技術では困難である。だが、成功は目の前だ。諦めるな。」という作者から現代の人々に向けたメッセージを感じました。

言葉としてワトソンに伝えられなかったフライデーの意思は、以下の言葉で結ばれます。

「この言葉が物質と化して、あなたの残した物語に新たな命を残しますよう。ありがとう。」

そのあとに描かれる場面では、魂の旅を終えたワトソンや一緒に旅をした人物たちがそれぞれ新たな旅に出ている姿が描かれています。

ワトソンたちの生き生きとした表情で飾られるエンディングに、人々の魂に対する好奇心は尽きることがないという作者の言葉が聞こえてきです。

感想

SFに全く興味のない私ですが、この作品を見て伊藤計劃の世界の沼にどっぷり足を突っ込んでしまいました。

他2作のアニメ映画はもちろん、原作も全て読み込みました。

科学や数学といった分野が苦手な私でもこんなに夢中になれた理由の一つは、SF作品でありながら文学的要素がとても大きいことです。

「魂の証明」という科学的テーマを言葉という文学的要素で解いていく部分は勿論、作品を飾るワトソンとフライデーの詩的なモノローグにもその魅力を感じます。

また、ワトソンの心理描写をセリフだけでなく効果的な回想シーンの挿入などで繊細に表現しているので、とても感情移入しやすいです。

『屍者の帝国』は伊藤計劃晩年の未完作です。作者を良く知る円城塔が執筆を引き継ぐことで完成しました。

そういった点からも、志半ばで若くして亡くなったフライデー・その遺志を引き継ぐワトソンが、そのまま二人の作者を投影しているように感じる場面も多くあります。

空っぽのフライデーの体に自分の思いを痛切に投げ掛け、未練と向き合うワトソンの姿は何度見ても胸が痛みますし、物語の最後に流れるフライデーの中に眠る言葉には思わず目頭が熱くなります。

シャーロック・ホームズやロビンソン・クルーソーなど世界的に有名な文学作品の登場人物に肖った人物名など、作中に物語を読み解くヒントが散りばめられているので、作品の深層を追い求めて何度も繰り返し見てしまう中毒性の高い作品です!

19世紀末の各国の風景を忠実に描き起こした世界で人物の言葉や感情に重きを置く新感覚のSF作品を、是非お楽しみください!

まとめ

 

引用元:dアニメストア

若くしてこの世を去った平成のSF作家・伊藤計劃の最後の作品『屍者の帝国』。

現代科学でも解明の難しい魂の存在について、文学的な切り口で迫っていく新感覚のSF作品です。

作品舞台は19世紀末でありながら、科学技術による生命の代替・その倫理性など、現代や近未来にも通じる部分が多い作品です。

アニメが好きな人、SFが好きな人、文学が好きな人、歴史が好きな人…今を生きるさまざまな人に見てほしい一作です!


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