ヴァンパイアに一族を殺され、復讐の為にヴァンパイアを狩る青年・ユーリィ。
ユーリィの前に死んだはずの兄がヴァンパイアとなって現れる。
ヴァンパイアは根絶やしにしたいが、兄は殺せないユーリィが選んだ道とは。
ヴァンパイア、バトル、兄弟愛、親愛、復讐、仲間、絆と、様々な要素が詰まっていて、見終わった後には様々な感情が胸に湧き上がる作品です。
以下の内容にはネタバレが含まれます。閲覧の際にはご注意ください。
あらすじ
ヴァンパイアと狩人と人狼
時代は昭和初期。闇に巣食うヴァンパイアと、ヴァンパイアを狩る狩人がいた。
ヴァンパイアは謎の死に至る病が流行り、絶滅の危機に瀕していた。
病を治すために、万物を可能にするという「天狼の匣(シリウスのはこ)」を探し求める。
ヴァンパイアのカーシュナーは日本の東京に天狼の匣があるという情報を元に東京へ潜入する。
それを追ってウィラード率いるユーリィ達の狩人の部隊「V海軍」も東京へと潜入する。
東京では、封建制の復活を目論む百虎党が暗躍していた。
百虎党は、アルマ商会という組織と繋がっており、そのアルマ商会は、ユーリィ達の追うカーシュナーが牛耳っていたのだった。
ヴァンパイアを追う中、ユーリィは死んだと思っていた兄・ミハイルと再会する。
しかし、ミハイルはヴァンパイアになっていた。
ユーリィは兄との再会を嬉しく思うが、ヴァンパイアへの復讐心が揺らぎ困惑していた。
アルマ商会は百虎党が用済みとなり、支援を打ち切る。
百虎党はアルマ商会討伐せんと動き始める。
アルマ商会は軍に新兵器を売りかけ、演習を行う。
その演習を追ってユーリィとドロテアが出張へ出る。
列車に乗るユーリィとドロテアだったが、ユーリィがヴァンパイアの匂いを嗅ぎつけ、向かいの列車へと乗り換える。
向かいの列車には、帰りの軍隊と、カーシュナーとミハイルを含めたヴァンパイア達と、ヴァンパイアの作った新兵器「人造KURATAKE」が乗っていた。
途中で列車を百虎党が止め、カーシュナーを狙い列車に乗り込む。
ユーリィは再びミハイルと会い、会話をする。
ミハイルは、ユーリィは復讐者には向いていないと言い、次に狩人として会ったときには弟ではなく敵だと宣言する。
百虎党は列車の進路を変え、行き止まりへと向かう。
百虎党の頭は人造KURATAKEにあっけなく殺されてしまう。
列車を止めようとするユーリィの前に人造KURATAKEが待ち構えていた。
人造KURATAKE相手に手こずるユーリィだったが、ミハイルが人造KURATAKEを倒す。
しかし列車を止めるには間に合わず、終点に差し掛かり列車は横転してしまった。
別れ際ミハイルは、「匣があれば生かすことも殺すことも出来る」と言いその場を去る。
ヴァンパイアの猛攻
天狼の匣は東京には無いことがわかり、エフグラフの元へ合流しようとするカーシュナー達だったが、その前に狩人を駆逐する為に動き始める。
V海軍が宿泊している直江邸へ、ヴァンパイアが奇襲をしかけようとしていると知った狩人達は、屋敷の人を避難させ、罠を仕掛けて待ち伏せる。
ユーリィとフィリップ、ドロテアとファロンに別れて対応するが、ヴァンパイア達は屋敷に火を放ち総力戦へと持ち込み、ひっきりなしにやってくる。
ドロテア達と合流しようとするユーリィ達の目の前にカーシュナーとミハイルが現れる。
危機的状況の中、ウィラードが頼んで動いた陸軍が応援に駆けつける。
それを嗅ぎつけたカーシュナーはその場を去り、上から眺めることにした。
再び敵対するユーリィとミハイル。
ヴァンパイアであっても兄を殺せないと言うユーリィに、ミハイルは、ヴァンパイアが天狼の匣を狙っている事を話す。
そして「ヴァンパイアになった俺には出来ない、お前だから出来ることをしろ」と言い残し、姿をくらませる。
高みの見物を決めるカーシュナーの元にウィラードが訪れ、相対する。が、首に刃を突きつけられる。
そこへユーリィが来る。
カーシュナーは、10年前にドックヴィルが狙われた真実を語る。
ヴァンパイアが入手した古文書を、ウィラードが解読してしまい、ドックヴィルは狙われた。
怒りに身を任せたユーリィによってカーシュナーは息絶え、ウィラードに何故黙っていたのかと問い詰める。
ウィラードはユーリィを助けたことを、エゴであり、ユーリィへの贖罪であるのに、復讐の道具として利用していたと語り、ユーリィが全てを知った時が死ぬ時だと覚悟していた。
ユーリィにとってウィラードは、心の支えであり、物心ついた時には父親が居なかったユーリィにとって、父親のような存在だった。
どうして村が襲われなければいけなかったのか、匣とは何なのか、教えてほしいと懇願する。
天狼の匣
ウィラードが知っている限りの匣の情報を教えてもらったユーリィは、ロンドンに戻らなければならないV海軍から離れて匣を探すことを決意する。
真に匣を追うヴァンパイア・エフグラフが目撃されたという南樺太へ向かった。
エフグラフと合流したミハイルは、天狼の聖地へと入る。
匣は、ミハイルとユーリィの父親・アレクセイによって封印されていた。
ミハイルは封印を解き、エフグラフに反逆しようとするが、ヴァンパイアになったミハイルでは出来なかった。
樺太に辿り着いたユーリィは、エフグラフに仲間を殺され、匣を追っているビショップと出会う。
ユーリィとビショップは、匣について知っているという老人・赤坂のもとを尋ねる。
丁度その時、赤坂はヴァンパイアに襲われていた。
ヴァンパイアは撃退するが、今度は赤坂に銃口を向けられる。
アレクセイというユーリィの父親の名を口にしたことから、彼がなにか知っていることがわかるが、赤坂は口を硬く閉ざす。
ユーリィは天狼の最後の生き残りとして、匣の事を知らなければならないという必死の説得に、赤坂はアレクセイの面影を見る。
そして匣がアレクセイは必死に封印したことと、封印された場所を教える。
その頃、ウィラード達はドックヴィルへ向かい、死んだ村人の弔いをし、天狼の匣の対となり、匣を運べるようにするものを回収し、ユーリィの元へと急ぐ。
量産型人造KURATAKEに阻まれながらも、聖地へとたどり着くユーリィとビショップ。
ユーリィは封印へ入り、父の記憶の残滓を見る。
【15年前程前の、ユーリィがまだ物心つく前だった。
熊に襲われたミハイルとユーリィを、赤坂が熊を撃ち抜いて助けた。
村は赤坂を歓迎し、もてなした。
だが、赤坂は天狼の匣を狙う日本からの使者だった。
恩を受けた赤坂は、アレクセイに日本だけでなく世界各国が天狼の匣を狙っていることを話した。
村の掟で、天狼の匣を知った者、狙うものは殺さなければならなかった。
人間と共存する事を望んだアレクセイは、匣を封印することを決意した。】
アレクセイは、自分が犠牲になり封印することで、世界の均衡は保たれているとユーリィに語る。
匣と共に孤高に生きるという天狼の枷を一人で背負うと、封印を解くことを拒む。
だがユーリィは、引き下がらなかった。
それでは何も変わらない。匣と共に生きて、匣を封印する以外の方法で、世界との共存する方法を探したいと説得する。
アレクセイはユーリィに匣を託した。
匣の封印が解かれる時を待っていたエフグラフは、ミハイルに命令して匣を奪わせようとする。
血の盟約に逆らえないミハイルは、自我を失いながらユーリィに襲いかかり、匣は奪われてしまう。
ビショップは匣を追い、ユーリィはミハイルと戦う。
ミハイルは事前に、病に罹れば血の盟約から逃れられる事を知り、患者の血を摂取していた。
感染することで正気を取り戻したミハイルは、ユーリィに何故封印を解いたのかと問い詰める。
ミハイルは10年間ずっとユーリィのことが気がかりだった。守りたかった。
ユーリィはミハイルが苦しんでいるのに、何もしないなんてこと出来ないと言う。
聖地から出た二人が見たのは、エフグラフが匣を持ち、ビショップが殺される光景だった。
匣はエフグラフに持ち去られ、ヴァンパイアに囲まれるユーリィ達。
そこへV海軍が到着する。
エフグラフは匣を体内に取り込み、真祖となる。
だが、あまりに強力な力に体を蝕まれ、自我を失い暴れまわる。
ミハイルとユーリィはエフグラフと戦うが刃が立たない。
しかし、エフグラフは力を抑えきれずに自壊し始める。
エフグラフから匣を取り戻すが、ミハイルは力尽きてしまう。
ユーリィはウィラードに、匣の力をこの世界の為に使う。しかしエフグラフのようになってしまったら、もう一人の父として殺してくれと言い残し、別れを告げる。
登場人物の説明
ユーリィ
人狼の種族、天狼(シリウス)のたった一人の生き残り。人間とのハーフ。
並外れた嗅覚を持っている。おそらく天狼の能力の一つ。猪突猛進で、本能に任せて周りを省みないこともあるが、基本的には心優しい青年。
天狼の種族は、ユーリィがまだ幼かった頃に、ヴァンパイアに襲われて絶滅した。
一族を殺された憎しみを胸に、ユーリィはヴァンパイアを狩っていた。
ミハイル
ユーリィの兄。
天狼の集落が襲われた際、ユーリィを逃がす為に囮になり死亡したと思われていたが、天狼の血を狙ったエフグラフによってヴァンパイアにされていた。
ヴァンパイアになっても弟への愛情は変わらず、殺すことが出来ない。
ウィラード
V海軍のリーダー。表向きには国際的な海運会社としているが、ヴァンパイアを追う狩人の部隊の一つである。
集落を襲われたユーリィを拾い、復讐の道を示した。
ドロテア
そこそこの金持ちの家の娘らしいが、ヴァンパイアと出会い狩人の道を進む。
姉御肌で、ユーリィが気になる涼子にアドバイスをしたりする。
ファロン
アイルランド人
ガタイが良いが、頭脳派を自称している。
兄弟が複数いる。
フィリップ
イギリス人
ヴァイオリンが上手い。
天狼に家族を殺されたらしく、ユーリィを毛嫌いしていた。
直江涼子
直江家の一人娘。お転婆娘で父親を度々困らせる。
ユーリィのことが気になっており、事あるごとにユーリィを追いかけていく。
剣術を習っており、なかなかの腕前である。
伊庭
日本の軍隊の少佐。
軍の命令で百虎党を追い、それに関与している可能性のあるV海軍とアルマ商会に目をつけていた。
列車事件の際に、ヴァンパイアと天狼の匣の存在を知り、以降は軍の命令で天狼の匣を探す任を押し付けられる。
エフグラフ
ヴァンパイアの繁栄の為に天狼の匣を求める。
カーシュナー
エフグラフの手下。アルマ商会の幹部。
ビショップ
狩人の一人であり、イギリスの諜報員。だったが、仲間を皆殺しにされ、ビショップ本人はヴァンパイアにされた。
ヴァンパイアを憎み、天狼の匣がエフグラフの手に渡るのを阻止しようとする。
わかりにくい点を解説
狩人
ヴァンパイアを追う組織。公にはされていないようで、ヴァンパイアと同じように闇に紛れて動く。
しかし、世界各国に諜報員が存在しているらしく、活動範囲は広いようだ。
本拠地はロンドン。
ヴァンパイア
この作品には、貴族種(ロイヤルズ)と下等種(スレイブズ)の二種類のヴァンパイアが存在している。
下等種は、日光に目を焼かれないよう特殊なレンズで目を保護している。
貴族種は、人間の姿のままでも戦闘能力が高い。おまけに日の下でも制限なく動き回れる。
作中で特に説明はないが、空中を飛ぶことが出来る。
天狼(シリウス)
人間から並外れた潜在能力を秘めている種族。感情が昂ぶると抑えられずに暴れる。
ドックヴィルという村に住む一族。10年前にヴァンパイアの襲撃を受けて滅んだ。
天狼の匣(シリウスのはこ)
ありとあらゆる知識と技術、叡智の結晶が詰まっている。
天狼の血を受け継ぐものが守る。
ドックヴィルに元々あったが、ユーリィの父親が持ち出し、天狼の聖地である南樺太にある聖地に封印した。
考察・感想
この作品のモチーフになっていると思われるのが星座の世界です。
まずシリウスと聞いて思い浮かぶのが、おおいぬ座のα星のシリウスだと思うのですが、このシリウスとこいぬ座のα星プロキオンとオリオン座のα星ベテルギウスを合わせて、冬の大三角形となります。
オリオンと言えば、一流の狩人としても名高い英雄ですよね。
そして、狩人はこの作品ではヴァンパイアを追う存在。そして、ウィラードは自身達の事を「正義の味方」と呼称しています。
次に、こいぬ座は、神話では、デュオニソスから知恵を授かったことにより非業の死を迎え、うしかい座と乙女座と共に星座にされた星。
これも、天狼の匣という叡智の結晶を持っていたが為に狙われたドックヴィルと重なります。
またおおいぬ座も、必ず獲物を捕まえる猟犬が星座にされたものです。また、オリオンの猟犬という話もあるそうです。
EDでは、大小の二匹の狼が並んでいる姿がありますが、これはユーリィとミハイルを表現しながら、星座のことも暗示しているのではないでしょうか。
”冬の”大三角形というのも、ドックヴィルと樺太という雪深い環境に合っています。
ヴァンパイアといえば闇に生きる生物。そして星も、暗闇でこそ輝くことが出来る。
疑問に思うのが、天狼の匣の存在。これはやはり、外なる者の存在から受け取ったものなのでしょうか。
というのも、天狼の匣単体ではこの世界の人間には扱えない。だから対となるものを作り、天狼のみが扱える形となった。と作中で説明があります。
これは逆説的に言えば、この世界以外の存在には扱えるということです。
そして天狼の匣は”与えられた”とも言っていました。
ということは、5000年前の天狼に、外なる者が天狼の匣を授けた。ということではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本記事では紹介しきれなかった、涼子と伊庭少佐の活躍もアニメを見て是非お確かめください。