現在劇場版が放映中のヴァイオレット・エヴァーガーデン。
ヴァイオレット・エヴァーガーデン全体でテーマになっているのは、手紙で繋がる人の心、戦争や病気で人が死ぬことの悲哀、それでも生きていく人の強み、そしてそれを支える一つが手紙や言葉で伝えられた大切な人の心、と、心に響くものが多いです。
涙無しには見られないこの作品なのですが、そのTVアニメをネタバレを含めながら、感動するシーンや印象的な箇所をお伝え出来ればと思います。
あらすじ
元軍人で兵器、機械人形として扱われてきた少女がいた。
彼女が作品の主人公、ヴァイオレット・エヴァーガーデンである。
ヴァイオレットは大戦で両腕を失い、義手を付けられ、もう一度兵器となる為に手紙を書いて状態回復を試みていた。
ヴァイオレットには、ギルベルト・ブーゲンビリア少佐という上官がいた。
手紙、というより報告書は彼に向けて書かれたものだった。
彼女の元にギルベルトの友人、クラウディア・ホッジンズが訪れる。
ギルベルトに頼まれたと言い、ヴァイオレットはエヴァーガーデン家に連れて行かれる。
エヴァーガーデン家から飛び出したヴァイオレットは、ホッジンズが起業したCH郵便社で働くことになる。
そこで出会った自動手記人形(ドール)は、少佐が最後にくれた言葉「愛してる」をすらすらと言葉にした。
ヴァイオレットには「愛してる」が分からなかった。
だから、それを理解するために自動手記人形になった。
それから、様々な人の「思い」を手紙にした。
兄へ気持ちを伝えられなかった同級生。
世界一のドールになるという夢を持つ同僚。
誰もが共感する恋文を所望するオペラ歌手。
隣国の王子に恋心を抱く王女。
来ぬ人を待ち続ける天文学者。
妻と娘を亡くした悲しき劇作家。
病気の母と、まだまだ母親に甘えたい年頃の少女。
戦場から手紙を贈りたい兵士。
人の心に触れながら、ヴァイオレットは自分のしてきたことの重さを知る。
“以下はネタバレ記事です。ネタバレが嫌な方は見ないで下さい。”
かつて軍人であり、多くの人を罪の意識のないままに殺してきたヴァイオレット。
しかし、多くの手紙を書く内に、ヴァイオレットはその罪の重さを理解する。
「私は誰かの”いつかきっと”を奪ったのではないのですか?
そしてその人たちにも、愛する相手がいたのではないですか?」
自らの体が”罪”という火で燃え上がっていることにヴァイオレットは気がつく。
そんな時、名義上は養母であるエヴァーガーデン夫人から「死んだギルベルト」という言葉を聞く。
すぐさまCH郵便者に駆け込みホッジンズに問い詰めるヴァイオレット。
ホッジンズから、ギルベルトは未帰還扱いになっていて生存は絶望的と説明される。
酷く取り乱したヴァイオレットは、ホッジンズの言葉を受け入れられずに、CH郵便社を飛び出した。
ヴァイオレットが向かったのはギルベルトの兄であるディートフリート・ブーゲンビリア大佐の元。
ディートフリートはヴァイオレット拾ってきた張本人。そして、ヴァイオレットを兵器としてギルベルトに押し付けた人でもあった。
ディートフリートからも求める回答は得られず。
ヴァイオレットは過去にギルベルトと訪れた別荘を訪れる。
別荘では、ギルベルトの墓が建てられていた。
それでもギルベルトの死を受け入れたくないヴァイオレットは、最後にギルベルトと共に戦った、インテンスへと赴く。
雨に打たれながら少佐を探すヴァイオレットを、ホッジンズと、同僚のベネディクトが保護する。
存在意義を見失ってしまったヴァイオレットは、自室に引きこもる。
自暴自棄になったヴァイオレットは、とうとう自分の首に手をかけ、自死を図ろうとする。
しかし、ギルベルトの「生きろ」という言葉が邪魔をした。
多くの命を奪ってきた自分が生きていていいのか、ギルベルトに問いかけるが、応えはない。
そんなヴァイオレットの元に、同僚のアイリスとエリカからの手紙が届く。
それは、ヴァイオレットが初めて貰った手紙であった。
配達員のローランドから、配り終わってない手紙があると聞いたヴァイオレットは、手伝いを申し出る。
手紙を配り終わると、ローランドは「よかった。全部配り終わったんだな。届かなくていい手紙なんてないからな」と言った
自分が今まで書いてきた手紙は、確かに、誰かと誰かの心を繋げていたことに、ヴァイオレットは気付く。
立ち直ることの出来たヴァイオレットに、ホッジンズは言う。
「してきたことは消せない。でも、君が自動手記人形としてやってきたことも消えないんだよ。ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
それから数カ月後、ライデンでは大戦後初めての航空祭が行われる。
航空祭では、行き場の亡くなった手紙含め、様々な人の思いが込められた手紙が上空から飛ばされる。
ヴァイオレットはこれまでにも何度かギルベルトに向けて手紙を書こうとしてきた。
しかし、書くことは出来ずにいた。
そこへディートフリートが訪れ、会わせたい人がいると言う。
ヴァイオレットを迎えたのは、ギルベルトとディートフリートの母親であった。
「思い出す度に辛くても、ずっと想っているわ。
だってこんなにも、愛してるんだもの」
その言葉を聞き、自分の中にあった心を言葉にすることが出来たヴァイオレット。
ギルベルトがどこかで生きていることを信じ、物語は幕を閉じる。
「お客様がお望みならどこでも駆けつけます。
自動手記人形サービス、ヴァイオレット・エヴァーガーデンです」
「登場人物についての説明」
ヴァイオレット・エヴァーガーデン
主人公。元少女兵。金糸の髪に碧の瞳を持つ。
兵士時代は、優れた身体能力と武器の扱いで、小柄ながらも素早い動きで敵を翻弄し、またたく間に敵を残滅していた。
上官だったギルベルトの「愛してる」という言葉の意味を知りたくて自動手記人形になる。
自動手記人形になった後は武器は持たず、誰も殺さないことを心情にしている。
ギルベルト・ブーゲンビリア
ヴァイオレットの元上官。階級は少佐。
大戦の最終決戦「インテンス奪還戦」以降消息不明。
ディートフリートに昇格祝としてヴァイオレットを貰う。
孤児で名前の無かったヴァイオレットに、名前を授け、言葉と文字書きを教える。
ヴァイオレットを道具として扱うことに抵抗を感じながらも、他に彼女を生かす方法も思いつかず苦しむ。
クラウディア・ホッジンズ
CH郵便社の社長で元軍人。ギルベルトとは士官学校以来の親友。
「女の子が欲しかったから、女の子の名前しか考えてなかった」という理由で女性名。本人はかなり気にしているらしく、苗字で呼ばれることを好む。
ギルベルトに代わり、ヴァイオレットを自分の子供のように見守る。
女性の尻に敷かれている描写が度々ある。
ベネディクト・ブルー
CH郵便社の配達員。ホッジンズとは古い付き合いらしい。
ピンヒールのブーツを履いており、足を痛めた時はローランドに「あんな靴履いてるからだ」と言われていたが、変える気は無かったようだ。
カトレア・ボードレール
CH郵便社の自動手記人形。
ヴァイオレットを同僚として上司として見守る。元踊り子。
情熱的な恋文を綴り、社内一番人気の自動手記人形。
エリカ・ブラウン
CH郵便社の自動手記人形。
控えめな性格で、人との対話が主要な自動手記人形に向いていないと感じ始めていた。
ヴァイオレットのひたむきな心に影響され、初心を思い出す。
アイリス・カナリー
CH郵便社の自動手記人形。
ライデンシャフトリヒ北東部にあるカザリ村出身。
失恋のショックでライデンまで上京し、自動手記人形になる。
世界一の自動手記人形を目指している。
ディートフリート・ブーゲンビリア
ギルベルトの兄。ヴァイオレットを最初に見つけた。
ヴァイオレットと出会った時に、その場にいた仲間を全員殺されたが、アニメでは詳細は明らかになっていない。ヴァイオレットを憎み、恐れていた。
ギルベルトが消息不明になったことへの悲しみと怒りを他に当てる訳にもいかず、全てヴァイオレットの所為にする。
皮肉が口癖になっている。
ローランド
CH郵便社の配達員。人当たりの良い老年男性。
「わかりにくい点を解説」
本作の主要な単語として自動手記人形(ドール)というものがある。
本来は代筆を自動で行ってくれる機械のことをさすのだが、代筆業を営む人も同じ名称で呼ばれ親しまれている。
本作の世界観はオリジナルのもので、町並みは欧州を思わせるものだが、作中には焼きそばが出てきたり、CH郵便社のモデルは京都の「京都府京都文化博物館」と言われている。
また、作中に出てくる文字もオリジナルのものだが、作中のタイプライターを元に解読することは出来る。
試しにOPのタイトルの後ろの文字を解読してみると「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」と書かれているのだ。
そして、本作には原作小説がある。
京都アニメーションのKAエスマ文庫発行の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」上・下・外伝・エバーアフターの全4巻。
原作にしか出てこないキャラや設定があり、原作には原作の良さがあるので、是非読んでみてほしい。
感想・考察
まず、京都アニメーション制作ということで、作画がとにかく綺麗なんです。
ギルベルトとヴァイオレットの瞳がアップになるシーンとか、ヴァイオレットが手袋を外して義手が顕になるシーンとか、他にも素晴らしいシーンは沢山あって、むしろどのシーンを切り取っても絵になる、本当に素晴らしい作品です。
ヴァイオレットが自動手記人形を通して成長して、最初は機械のように無表情だったのが、微笑みを浮かべるようになったり、泣いたり、表情が少しだけ豊かになっていって「愛してる」も少しはわかるようになるのです。
そしてストーリーが進んでいくごとにOPとEDに深みが増すんですよね。OP・EDも映像がとても綺麗で、毎話ごとに見てても全然飽きない程なのです。
OPの『TRUE』の歌詞の一部分「さよならは苦くて、アイシテルは遠い匂いがした」というのが、ヴァイオレットの心情をとてもよく表していて、OP聞くだけでポロポロと涙を零してしまうほどでした。
EDの『みちしるべ』も出だしの「あなたの声がみちしるべ」という歌詞で、ボロボロ泣きますよね。特に8,9話。
メロディーが優しくて、本編の過酷な内容をEDが慰めてくれるようで、何度もこの曲に泣かされました。
ヴァイオレットはずっと、ギルベルトが最後にくれた「生きて自由になりなさい 心から愛してる」という言葉と少佐の瞳を胸に、自動手記人形としてタイプライターを武器に戦ってるんですよね。
でもギルベルトはいないんですよ。どこを探しても。
けれど、本作はヴァイオレットの”成長”を描いた物語なので、これで良かったと思うのです。
ギルベルトのいない所で、ギルベルトのくれた言葉でヴァイオレットが成長していくのが美しいのです。
でもやっぱり可哀想なので、生きているなら早く会いに来いよ!!って思っちゃいますね。
まとめ
ここで伝えられたのは、ヴァイオレット・エヴァーガーデンのほんの一部です。
本編を見ると、声優さんの演技力や作画の美しさ、BGM全てで圧倒される迫力です。
是非ご覧ください。
また、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン スペシャル」「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 ―永遠と自動手記人形―」そして現在公開中の「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」も一緒にお楽しみください。